第十一話「親玉との決着」
「キィラアァァァ!」
奴は咆哮と共に血液を蛇に変形させた。
四方八方からリザードマンの傷口を依り代とした蛇が、俺めがけてまっすぐ飛んでくる。
傷を利用して戦う...似た者同士やな...。
手元の剣を使って、手のひらに傷を作り、そこから溢れ出る魔力で、
初級炎魔術『火球撃』を発動させた。
威力は弱いが、れっきとした魔術だ。
手のひらから打ち出された複数の炎の球体に直撃した蛇たちはただの血液に戻り、地面に落ちた。
俺は奴に急接近し、ゼノさんが作った傷口に刃を入れた。
「グルァァァ!」
飛び散った血が無数の蛇に変形され、俺の全身に嚙みついてきた。
最初に作った傷は治りかけていたが、俺は残りの放出されている魔力を使い、
初級炎魔術『火焔爆』を発動させ、瞬時に起こった爆風を利用し、距離をとった...。
「・・・・・っ!」
噛みつかれた傷口から、体中に痺れるような感覚が広がっていった...。
毒か?体が動かない...。
俺の動きが止まった数秒後、奴は急接近し、
爪と拳の連続コンボによって俺はぶっ飛ばされた...。
ぶっ飛ばされた直後、奴につけられた大きな爪痕が治るとともに体の痺れが引いていった...。
この感じ...毒も治せるのか?
しかしまずいな...ガイアの発動にも魔力を使う...。
今の傷の修復と体内の解毒、これだけでもかなりの魔力を使ったはずだ...
ただでさえ少ない俺の魔力を全部治癒に回すのはベストだと思えん...。
残りの少ない魔力をすべて魔術に回すっきゃねえな...。
もう一度手のひらに傷をつけた。
数匹の蛇が再び襲い掛かってきた。
地面を蹴ると同時に、初級風魔術『風曝陣』を発動、
勢いを利用し、スライディングで避け、奴に向かって走った。
蛇の攻撃はあまりくらわないようにしないと...。
後ろからわんさか蛇が追いかけてくる、おっかねぇ...
でも、あの蛇を作るには自分の血が必須、奴にも相当ダメージが入ってるはずだ。
おまけに、蛇を操ってるときは動けなくなるみたいだ。
奴に向かって走る途中、正面から蛇の増援が向かってきた。
しかたない...
初級炎魔術『火球撃』を発動させ、
正面からむかってくる蛇たちを数匹焼き払った。
だが、炎の範囲外から来た蛇に傷をつけられた...。
体内の魔力がガイアを発動しようとしている感覚があった。
俺はそれを止め、走り抜け、奴の懐まで近づき、
初級炎魔術『火焔爆』を至近距離でぶっ放した。
「グルラアアァァァ!」
咆哮と共に蛇は崩れ、奴は拳を振り上げてきた。
あっぶね!
スレスレだったがなんとか避け、奴の傷口に剣を差し込んだ。
奴の体からドバドバ出てきた血が、俺にかかり、
さっきの痺れとは段違いの痛みが体中を駆け巡った。
クソ、意識が途切れてくる...。
でも、負けられない...悪いけど...死んでもらうぞ...。
朦朧とした意識の中で、俺は片腕を後ろに回し、最後の魔力で
初級風魔術『風曝陣』を発動、奴の傷口に刺さっている剣を無理やり押し込んだ...。
「カァァァァァ......」
弱々しい最後の咆哮を叫んだのち、奴は絶命した...。