第十話「洞窟の親玉」
ゼノさんは勢いよく洞窟に入っていった。
もちろん俺もついていく
彼女は洞窟には少し入ったことがあるらしい、ただ、奥に進めば進むほど
魔物が強力になっていき、手に負えなかったため、攻略を途中でやめてしまったらしい。
だが、洞窟内にはあまり魔物はいない...、たまに襲ってくる魔物も
狂戦士モードのゼノさんになぎ倒されていた...。
進んでいくと、だんだんと空間が広がってきた。
そして、ドーム型の空間が広がっていて、そこには、人の倍以上の大きさの体を
持つリザードマンが、朝絡んできたおっさん集団四人を襲っていた。
四人のうち二人が負傷して動けないらしく、叫んでいる。
「ミナミ!私がやつを引き付ける、その間にあいつらを後ろまで連れて行ってくれ!」
「・・・わかりました、無理せずに、危険だと思ったら逃げてください」
・・・大丈夫なのだろうか
ゼノさんは確かに強い、だけど、今の彼女は満身創痍という感じがする。
考えている間にゼノさんは飛び出していた。
ああ、もう、信じて進むっきゃねえ。
ゼノさんはリザードマンの後ろに回り込み、背中に剣を振るった...が、
刃は通らなかった、体の表面が硬いみたいだ。
だが、予定通りヘイトはゼノさんに移った。
今のうちに避難させないと...。
_ゼノさん視点_
こいつ...表面が異常なまでに硬い...。
こんな奴がこの森にいるとは知らなかった...
ミナミはあいつらに合流できているな。
あとは私がこいつをなんとか...。
初級風魔術『風曝陣』をサイドに発動し、素早くステップを踏み、至近距離まで距離を縮め、腹部に刃を入れた。
よし、手応え有りだ。
奴は素早い動きで私に近づき、爪を振り下ろした。
速い、だが、反応できる...。
私は足を軸に回り込み、カウンターをくらわせた。
ミナミに教えてきたカウンターだ。
奴の体からは、血が大量に出ている、この感じなら放っておいても絶命するだろう
私は、追い討ちをかけようと、奴の懐まで急接近した...
「キルラアアアァァァ!」
だが、突然、様子が変わった...。
傷口から出た血が、蛇のような形に形成され、襲ってきたのだ。
初撃を防ぎきり、後方へ下がった。
だが、剣に付着した血が、瞬時に形成され、飛びかかってきた。
・・・っ!
反応しきれず、体を数か所貫かれ、吹き飛ばされた。
・・・なんだ?...体が動かない...これが奴のガイアなのか?
その場に倒れこんでしまった...。
「ゥゥゥウウウ・・・」
威嚇しながら近づいてくる...。
・・・まずい、体が動かない、腕が動かない...意識が薄れていく...。
___ミナミ視点___
ヤバい!ゼノさんが!
俺は思わず飛び込み、ゼノさんを抱え、奴の攻撃をなんとか避けた...。
気を失ってる...無理はしないよう言ったのに...、
まあ、ゼノさんらしいが...
しかし、まずいな...。
避けた方向が入り口側と真逆...ゼノさんを抱えながら移動してたら、
リザードマンの餌食になっちまう...。
・・・・・・はぁぁぁ、やるっきゃねえ...、彼女には死んでほしくないしな
「そこにいるおっさん四人!俺がこいつを引き付けるから、動ける奴は彼女を運んでやってくれ!」
「・・・・・あーもう、わーったよ!」
俺は自分の腕に傷をつけて、ガイアを発動させ、ゼノさんにできた数か所の傷口を治した。
嫁入り前の繊細な女性の肌に何てことしやがる!
「うちの姉御がずいぶんと世話になったみてえじゃねえか。
たっぷりお返しさせてもらうぞ...」
「ギィルアァァァァ!」
・・・・・かっこつけてみたけど、ヤバい。
足震えてきやがった...。