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妹が魔物化したけど可愛いので元の姿に戻したくない  作者: レイディアンと
第五章 トゥエルヴ・マカークス
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12 智朗、容赦しない。


 ガアン!


 再び狙撃手の撃った弾がフード付きパーカー+5によって弾かれた。



「チッ!」



 狙撃手は舌打ちした後、黒い翼を羽ばたかせて上昇を始めた。


 相手に攻撃が通用しないと見て逃げるつもりのようだ。


 今の所俺に自由飛行の能力は無いので、あまり高度を上げられるのはまずい。


 付近に狙撃手の味方が居ないか気配を探った後、狙撃手に向けて跳躍する。



 ガシッ!


「な!?」



 足にしがみつくと、狙撃手は驚いて声を上げた。



「この!」



 狙撃手は俺の顔を蹴ろうとしてきたが、首を振って避ける。



「放せ! クソ!」



 俺を捕まえようとする手を避けながら太腿、腰、背中と登っていき、翼の根元を掴む。



「な、何を……、止め……!」


 メギ


「ひぎ!」



 翼を折られた狙撃手は、飛行を続けることが出来なくなり地上への落下を始めた。



「きゃあああ!」



 落下の恐怖に叫ぶ狙撃手。


 果たして狙撃手の体は落下時の衝撃に耐えられるだろうか?


 死なれてしまったら話を聞くことができない。


 いつの間にか結構な高さまで上がっていたので少し不安である。



「まあ大丈夫だろう」



 収納からロープと岩を取り出し、ロープで狙撃手の体に岩を巻き付ける。


 さらに狙撃手の背中を下方向に蹴り飛ばし、上から狙撃手の落下を見守った。


 我ながら中々に外道な行いであるが、狙撃してきた相手に容赦などあるはずもない。



 ドゴス!


「ぎあ!」



 鈍い音をさせて、狙撃手は団地近くの工事現場に落下した。


 団地屋上に着地した俺は跳躍し、落下した狙撃手の元へと向かう。


 ここは立てこもりが発生した学校から離れているので人払いはされていないと思われる。だが夜の工事現場に人はいない。叫び声を聞きつけて覗きに来るような者もいないようだ。


 工事用フェンスで囲まれた静かな工事現場の中を、建設中の建物の骨組みとかを何となく見ながら歩いていく。


 やがてバリケードやコーンといった工事資材が置かれた工事現場の隅に、狙撃手の姿を発見した。


 コーンが散乱しているところから見て、工事資材の中に突っ込んだようである。


 狙撃手はこちらに迷彩ヘルメットを向けたうつ伏せの状態で動かない。


 落下時に刺さったのか、左腕から鉄芯が突き出ている。痛々しい。


 スナイパーライフルはベルトで肩がけにされていた。落下の衝撃で壊れてしまったかもしれない。


 周りに怪しい気配はない。狙撃手の仲間は近くには居ないようだ。



「……」



 狙撃手の元へと歩き、腰に巻き付いているロープと岩を回収した後、首の後ろの服を右手の指でつまんで持ち上げる。


 顔を見てみると狙撃手は島を襲った怪しい二人と同じように鼻から下を布で覆っていた。狙撃のためか、ゴーグルは迷彩ヘルメットの方に上げている。



「ふむ」



 気絶しているようだが、死んではいない。


 観察スキルで見てみると、録画機や通信機を持っているようだが、今は機能をオフにしているようであった。



「おい」


「うぐ……」



 声をかけると小さくうめきながら狙撃手が目を開けた。


 性格のきつそうな目である。一重かつ、つり目。しかし形は綺麗なので、美人なのかもしれない。



「ハッ!」


「動くな。動いたら折るぞ」



 狙撃手の右腕を左手で持ち、目を覗き込みつつ、警告する。



「ううう!」



 だが狙撃手は俺の手を振りほどこうとして暴れた。


 落下のダメージのためか、実に弱弱しい暴れ方であったが、警告を無視したことに変わりはない。


 仕方が無いので左手に力を込める。



 グギ



 狙撃手の右腕はすぐに折れた。



「ぎ」



 痛みに叫ぼうとした狙撃手の口を左手でおさえる。辺りに人の気配は無いが、大きな音は出させないに越したことは無い。


 狙撃手の口をおさえたまま、絶対契約スキルを発動し、狙撃手に囁く。



「もう片方の腕も折られたくなかったら俺の指示に従え」


「……! ……!」



 狙撃手は目に涙を浮かべながら俺に向かって何度もうなずいた。


 契約成立である。


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