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妹が魔物化したけど可愛いので元の姿に戻したくない  作者: レイディアンと
第五章 トゥエルヴ・マカークス
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6 智朗、状況を俯瞰する。

 

 島が学生を放り投げるさまはライブ中継されていた。


 スマホで動画サイトを見てみたところ、ヘリコプターからの視点もあり、それはさながらスプラッタ映画のワンシーンのようであった。


 これを見た人々の勇者に対する印象は最悪となったことであろう。


 悠に対する周りの反応も変わるはずなので、フォローが必要になると思われる。


 面倒だがこれは遅かれ早かれ通る道だ。立てこもり犯を応援するのに問題は無い。




 学校の屋上に、ヘリコプターの羽に当たってはじけた学生の腕が落ちている。


 それを拾い、屋上の柵に飛び乗ったのは青いジャージの男、島である。


 機動隊の用意したサーチライトが島を照らす。



「折角こんな時間まで待ってやったのに、進展なしとかあるか?」



 ライトに眩しそうに目を細め、島は機動隊に話しかけた。進展とは、「国民保護緊急措置法」の廃止についてであろう。


 島は手に持った学生の腕をプラプラさせる。



「こいつがこうなったのは、あんたらのせいだぜ? なあ、山形のおっさん」


「島あぁっ!!」


「うひゃひゃひゃ!」



 何人もの機動隊に抑え込まれつつも、鬼の形相で叫ぶ山形を見て、島は心底楽しそうに笑った。



「……」



 屋上にある貯水タンクの上から状況を俯瞰しながら、ふと山形の立場が気になった俺である。


 ファンタシーゾーンで撃たれた時、山形は警察官だったはずだ。だが今はどうやら機動隊を指揮しているように見える。


 観察スキルで山形を見てみたところ、レベル7であった。周りの機動隊連中も見てみるとこちらはレベル3以下。レベル1の者もいた。


 警察官や機動隊連中の中で目立ってレベルが高かったから、勇者達の指揮を任されたとかであろうか。


 まあ、どうでもいいか。



 立てこもり犯によって学生が一人、はじけてしまったわけだが、機動隊連中に動く気配はない。


 ここで島を狙撃したりして殺したら教室に残された学生達が危ないし、教室の方に突入しようにも、相手の戦力が図れず犠牲を出しそうなので出来ないのであろう。


 このまま残りのいじめ加害者達も殺されてしまうのかとワクワクしたところで、状況に変化があった。



 ワーワー


「ん?」



 学生達の騒ぐ声が聞こえる。


 学校の昇降口から、人質にされていた学生達が走り出てきた。


 教室に残っていた立てこもり犯達は、金田君と香ちゃんのペアに敗れたようだ。



「チッ!」



 それを見た島が忌々しそうに舌打ちし、手に持っていた学生の腕を放り投げた後、柵の内側へ降りた。


 人質の大部分を失い、銃撃されることを恐れたのであろう。



「二人寄越せ」



 島は帽子の男に歩み寄ってそう言うと、残り三人のいじめ加害者の内二人の首を掴んだ。



「ぐおええ!」「い、嫌! ぐげええ!」



 帽子の男に残されたのは、いじめ主犯の男子学生一人である。


 振り返り、屋上の柵へ歩いた島は二人の学生の首を掴んだまま屋上から飛び降りた。



「ぁぁぁぁ!」「ぃぃぃぃ!」



 落下する感覚に、首を絞められながらも声にならない声を上げる学生二人。



 ドッ


「コッ」「カッ……ハ……」



 学生二人を掴んだまま10メートル以上の高さから落ちたにもかかわらず、平然と立つ島。


 落下の衝撃で学生二人の首は折れてしまったであろう。地面にたたきつけられた体の方もグニャグニャになっている。


学校のグラウンドの照明が機動隊を照らし、機動隊のサーチライトが島を照らしている。



「……」



 防護服に身を包み、ライオットシールドを構えて学校を取り囲む機動隊を見回す島。


 その目に映る狂気に、数人の機動隊が後ずさった。



「どけお前達!」



 山形が暴れると、山形に圧し掛かかっていた機動隊が退いた。


 立ち上がった山形は腰から拳銃を抜き、島に向かって構えた。


 あれは確かニューナンブとか言ったか。装弾数5発の回転式拳銃である。


 あの拳銃から放たれた銃弾は俺には効かなかった。


 レベル11の島に対して、果たしてどこまで有効であろうか。


 わからない。



「終わりだ、島」



 見れば周りの機動隊連中にも、銃を構えている者が居る。自動拳銃、機関拳銃や自動小銃、いろんな銃があるものである。高圧放水器を構えている者もいる。


 これらから一斉に射撃されたら、いくらレベル11の島であっても山形の言うように終わりかもしれない。



「……」



 一触即発の空気の中、島は学生二人を目の高さまでゆっくりと持ち上げ、機動隊に向けて言った。



「まだ生きてるぜ」



 確かに、学生二人はまだ、かろうじて生きているようであった。


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