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妹が魔物化したけど可愛いので元の姿に戻したくない  作者: レイディアンと
第四章 沈黙特急
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7 智朗、引き続き改造人間と戦う。そして機転を利かせる。

 


 バシィィン!



 滋武のライダースーツから青白い稲光が発生し、あまりの光量に俺の目が眩む。


 ただでさえ夜目が効く俺の目にこの光量はまずい。暫くまともに見えそうにない。


 すぐそこに、変身完了した改造人間がいるというのに。


 ああそうだ、治療スキルを使えば――。



 ドキャ!!


「ぐわー」



 頭部を蹴られた俺はその場で縦に回転させられた。その場で回転したおかげでバスの上からは落ちずに済んだ。


 回転しながら治療スキルで眩んだ目を治し、バスの屋根に叩きつけられつつ滋武を見上げる。



 ライダースーツが全体に稲妻を纏っている。デザインも肩とか肘とかところどころ流線型に尖った形になっている上、スーツ表面が人の筋肉の形に盛り上がっている。フルフェイスヘルメットは、チンバーが後頭部まで上げられて変形しており、それはまるでジェット機のパイロットが被るような形であった。黒くて中の見えなかったシールドはおでこの位置に移動し、その下からまた黒くて中の見えないシールドが出てきたようである。その奥には鋭い形をした目が青白く光って見えた。チンバーが上げられたので鼻から下が見えるかと思えば、フェイスマスクをしているようで、滋武の顔は見えなかった。


 この変身にどんな意味があるのかわからないが、とりあえず変身前よりは強そうに見える。


 まともに戦うのは避けた方が良さそうである。



 俺は滋武に対して足払いを見舞いつつ起き上がった。


 足払いを避けた滋武は俺に対して回し蹴りを放ってきた。


 その蹴りをバール+5で受け止める。



 ドガァ!


「ぐわー」



 変身前と比べて段違いの威力である。


 トンネルの壁へと吹き飛ばされる俺。だが狙い通りである。


 トンネルの壁を蹴り、俺の向かった先は井伊を乗せたまま走るバイクであった。


 何台かの車を経由し、井伊のバイクの近くまで辿り着く。


 投擲物を収納から取り出した俺は、それを指弾で打ち出そうと井伊のバイクに向かって構えた。



 ファオオオ



 ドローン襲来。



 ドンドンドン!



 ドローンと共に、至近距離で発砲してきたのは久麗である。


 井伊のバイクを狙うのを止め、久麗のバイクに向かって指弾を見舞う。



 ズド! ギャルルル!



 指弾を喰らい、バランスを崩した久麗のバイクが後退していく。



 バッ!



 俺は車の屋根から井伊のバイクに向かって飛び移った。



「……」



 だが俺の体が井伊のバイクに到達することはなかった。


 俺の体が空中で後方へと引き寄せられていたからである。


 振り返った俺の目に、車の屋根から俺に向かって手をかざす滋武の姿が映った。



 バヂヂヂ!



 見れば滋武の手から俺の持つバール+5に向けて稲妻が走っていた。


 明らかに、帯電したバール+5は滋武の手に引き寄せられていた。


 馬鹿な。


 帯電しているものは電気を帯びたものに引き寄せられるというが、それはこんなに強い力ではないはずだ。だがバール+5が滋武の手に引き寄せられているのは事実である。


 そうして引き寄せた俺を滋武は蹴り飛ばした。



 ドゴ!


「ぐわー」


 バヂヂヂ!



 吹き飛んだ俺を引き寄せて、再び蹴る滋武。



 ドゴ!


「ぐわー」


 バヂヂヂ!



 いかん。バール+5を持ったままでは戦いにならない。


 俺はバール+5を収納した。



 バヂヂ!



 滋武の手から放たれていた稲妻が途切れる。



「!」



 稲妻が途切れたことに驚いたのか、滋武に隙が生じた。


 引き寄せられていた勢いのまま、チャンスとばかりに滋武に掴みかかる。


 だが蹴り飛ばされた。



 ドガン!



 俺の体は大分前を走っていたタンクトレーラーのタンクにめり込んでいた。


 すぐにタンクから抜け出す。抜け出る際、タンクを破壊してしまいそこから何らかの液体が噴き出した。


 滋武を探す。滋武はまだ車の屋根にいた。追撃はしてこなかったようである。



 ジジジジジ……



 滋武の手に稲妻が走る。


 滋武は改造されたことで稲妻を操れるようになったのであろうか。それは一体何を元にした改造人間なのか。シビレエイか、デンキナマズか、デンキウナギか、或いは元にしたものなど無いのか。



 バチチチィ!



 滋武の手から俺に向かって稲妻が迸る。


 と思ったら外れた。いや、滋武の狙いはわかっている。わかっているが、もう避けるのは無理そうである。



 ボッ!



 滋武の手から迸った稲妻により、タンクから飛び散った何らかの液体が引火した。



 ボボッ! ドグワ!


「ぐわー」



 タンクが爆発した。





 ***




 

 パラパラと、小さなコンクリートの欠片が落ちる音がする。


 周りは真っ暗である。


 どうして真っ暗なのかと言えば、俺は今、瓦礫の下敷きになっているからである。


 タンクの爆発によってトンネルの屋根が崩落したのだ。



「ぬうう……」



 俺は改造人間との車上バトルに負けた悔しさにうなった。


 タンクの爆発時、爆風で吹き飛ばされた俺はスローモーションとなった世界の中を、なんとか車上に戻ろうと頑張った。だが爆炎の中、突っ込んできた滋武の連続攻撃を受け、天井から落ちて来る瓦礫の中に押し込まれた。その瓦礫と共に地面へ落下したことにより、俺は負けた。


 だがいつまでも悔しがってはいられない。


 井伊からサバイバルナイフ+5を返してもらわねばならないのだ。



 ゴトン



 上に乗っている瓦礫をどかし、瓦礫から這い出てトンネルの先を見る。


 明かりは消えており、崩落した屋根でトンネルが埋まってしまっている。


 この状態で井伊や久麗は無事だったのだろうか。滋武はまあ、生きているだろう。


 井伊のバイクはタンクトレーラーより先を走っていたので無事かもしれないが、久麗のバイクはあの時どこに居たのかわからない。もしかしたら爆風を受けて死んでしまったかもしれない。



「確認するか」



 俺は収納から携帯端末を取り出した。これは例の毒ガスを使ってきた連中から拝借したものである。


 携帯端末のロックを解除し、レーダー画面を見る。するとレーダー中央から離れていく光が映った。



「動いてはいるみたいだな」



 この光は久麗である。


 井伊のバイクに接近した時、久麗は至近距離から俺に対して発砲してきたため、完全に人躁術の射程であった。すぐに人躁術を行使して操り、GPS発信器を飲み込ませた。


 指弾で久麗に撃ち込んだのはGPS発信器であった。これも毒ガス連中から拝借したものである。


 GPS発信器を動物が飲み込んだ場合、信号がちゃんと発信されるのかとか、レーダーの範囲も心配であったが、一応見えているようである。


 瓦礫で埋まったトンネルの先を見る。



「……やるか」



 収納から取り出したのはスコップ+5である。


 タンク爆発時、トンネル内には多くの車が走っていたと思われる。瓦礫に埋まってしまったが、まだ生きている者がいるかもしれない。その者達を俺なら助けられるかもしれない。


 だが俺にそんな暇はない。


 レーダーで追えない距離に逃げられる前にトンネルを抜け、久麗達に追いつかなくてはならないのだ。



 ドス



 瓦礫に向かって突き出したスコップ+5は、固い瓦礫をまるでプリンのようにすくった。





 ***





 ゴオオオオオ



 夜の線路を走行中の特急コンテナ電車「ウルトラレールカーゴ」の上に張り付いている男が一人。俺である。



「ええと」



 張り付いたまま携帯端末をいじり、久麗の居場所を確認する。


 レーダーの光を見るに、久麗はもう少し前のコンテナにいるようであった。


 コンテナの上をジャンプして渡っていく。



「……」



 瓦礫を掘り進みトンネルから出て久麗の光を追ったところ、走行中の特急コンテナ電車へとたどり着いた。どうやら彼らはバイクから電車へと乗り換えたらしい。コンテナにバイクごと乗り入れたのかもしれない。こんな電車に普通は乗れないであろうから、運用会社にはWECOの息がかかっているようである。



「ここだな」



 久麗のいるであろうコンテナに着いた。


 中の様子を探ろうと窓を探すが、そんなものは無かった。


 時間が無い。ここはコンテナを破壊するしかない。コンテナを破壊した瞬間、再び改造人間との戦いとなるであろう。


 覚悟を決めて構えた俺の目に、特急コンテナ電車の後ろから接近する何かが映りこんだ。



「な……」



 俺は言葉を失った。


 上半身は人型、左右非対称の腕、下半身には四本の足がある。足の先端に着いた金属製の車輪は線路走行用であろうか。特急コンテナ電車の最後尾に腕を伸ばし、今にもとりつこうとしているそれは、巨大ロボットであった。


 そして、それはただの巨大ロボットではなかった。それは、船河原橋重工が開発した人が搭乗して操縦することができる巨大ロボット「クライス」であった。全高約5メートル、重量約10トンの重厚な機体を独自OSによって制御しており、コクピットに搭乗しての操作に加え、外部端末による遠隔操縦も可能な優れものである。


 人が搭乗して操縦できる巨大ロボット。夢しかないそのロボットの趣味的な造形をネットで見た時は心が躍ったものだが、何故その「クライス」がこんなところで線路を走っているのか。


 ポッター君やヒュージドッグの例からして、これを久麗達に差し向けたのは奴らであろう。



「スペクタクル」



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