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妹が魔物化したけど可愛いので元の姿に戻したくない  作者: レイディアンと
第三章 陰謀の定石
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4 智朗、強化人間と戦闘する。そして独多乃緒と対面する。

 

 クラブキーがデントのもとに近づいていく。


 強化人間がレベルアップした場合、どうなるのだろうか?


 デントの強さを見るに、強化人間は普通の人間の数倍、いや、十倍以上の力を持っていそうである。


 現在の俺のレベルは60。


 強化人間のレベル6と、一般人のレベル60。どちらが強そうだろうか?


 ここはデントをクラブキーにけしかけて、強さを測るのが正しい選択であろう。



 デントを操り、クラブキーに攻撃させようとしたその時である。



 キィィン……



 耳鳴り。


 さっきまで聞こえていたクラブキーの足音が聞こえなくなった。



 グラリ



 フラついた。誰が? 俺が。


 クラクラする。


 寝不足? いや、睡眠はしっかり取ったはずだ。


 急いで自分の状態を確認する。



 状態:失聴、めまい



 失聴だと? 俺が聴覚を失った? 何故?


 これは。


 これは攻撃だ。



「……! ……!」



 クラブキーが口をパクパクさせてこっちを見ている。気づかれた。


 めまいによって隠密スキルの効果が薄れてしまったようだ。


 すぐに自分に対して回復スキルを行使する。



『なんらかの技術で身を隠していたようだが、体重までは消せなかったみたいだね』



 部屋に独多の声が響く。回復スキルにより失聴は回復したようだ。


 そして、独多は俺に向けて話している。独多の話から推測するに、この部屋の床は重さを感知できるのだと思われる。部屋に入った時から、俺の居場所はバレていた。


 俺の存在に気づかれることなく独多の様子を探るつもりであったが、それは最早不可能である。


 どうする? 全員殺すか? 逃げるか?



「う……?」



 再びめまい。膝をつく。


 デントが柱を蹴りで砕いた時、空気が張り詰めたのを感じた。


 砕けた柱を見て戦慄したとか、そういう意味ではない。


 実際に、空気が張り詰めたと感じたのだ。



 そして失聴と三半規管へのダメージ。音響兵器だ。


 クラブキーが平気そうなところから見て指向性がある。


 移動しなくては。


 だがめまいで立ち上がれない。


 もう一度自分に対して回復スキルを行使する。



『デント君の意識が無い。井伊いいさんは我々の油断を誘うための囮。本命はこちらのようだ。クラブキー君、気を付けて』


「了解」



 井伊の仲間だと勘違いされたようだ。


 俺のめまいが回復する前に、クラブキーが凄まじい速さで接近してきた。


 膝を突いている俺に対し手刀を放つクラブキー。


 腕で防御して防ぐ俺。



 防いだ途端、クラブキーの動きが変わった。手刀は様子見だったようだ。


 クラブキーの容赦ない蹴りが俺の腹にヒット。


 体が吹き飛ぶ。


 俺の体が激突したことにより、部屋の柱が一本砕けた。



「ぐは」



 衝撃がフード付きジャンパー+5を貫通した。


 強い。


 これでレベル6とは。強化人間恐るべしである。



 立ち上がる。


 空気が張り詰める。


 音響兵器は絶えず俺を攻撃しているようだ。


 恐らく、センサーが反応した位置を自動的に攻撃するのだろう。


 壁にでも埋まっているのか、音響兵器がどこにあるのかわからないので破壊できない。



 跳躍し、柱に手を突き刺して体を支える。


 重さ感知ではどの柱にいるかはわかっても、高さはわかるまい。


 だが空気は張り詰めたままであった。


 他のセンサー、例えば動体検知や熱感知も使われている?


 隠密スキルは行使したままだが、既に発見された状態では隠密スキルの効果は薄れるのかもしれない。




 クラブキーが俺に向かって跳躍し、襲い掛かってきた。


 反撃する。だがクラブキーを殺さないように、様子見の平手打ちで。


 俺の平手打ちをクラブキーは膝を上げて防いだ。



 バアン!



 平手打ちを受けたクラブキーは吹き飛び、柱に激突し、回転しながら床に落ちた。彼はそのまま床を滑り続け、部屋の壁に当たって止まった。


 倒れたまま微動だにしないクラブキー。


 いかん。


 殺してしまったかもしれない。



「ぐばっ」



 クラブキーが血を吐いた。


 良かった。生きていた。


 クラブキーは体をガクガク震えさせながらも、起き上がろうとしている。



 強い。


 これでレベル6とは。強化人間恐るべしである。



「ぐげっ、ごえっ」



 クラブキーがバシャバシャ血を吐いている。


 放っとくと死んでしまいそうなので近寄って少し回復してやる。


 すると張り詰めていた空気が緩んだ。


 クラブキーが近くに居ると音響兵器による攻撃は止まるようだ。



 クラブキーは血を吐くのを止めたがうつ伏せになってぐったりとしている。


 どうにか殺さずに無力化できた。運が良い。


 彼らは将来俺の味方となるかもしれないのだ。できれば死んでほしくない。



『クラブキー君を一撃とは。君、一体どうやってそれだけの強さを?』



 独多が話しかけてきた。返事はしない。


 音響兵器や強化人間といった技術からして、独多は声紋から俺を特定してきそうだから。



 さてどうするか。


 井伊と俺の侵入はバレてしまった。


 奥の部屋に独多が居れば良いが、居ないかもしれないし何があるかわからない。


 音響兵器の例からして油断は禁物である。


 俺に残された時間も少ない。もうそろそろ帰らなければ十分な睡眠が取れなくなる。



 ここは人躁術でデントに独多の居場所を吐かせるのが正解であろう。


 音響兵器避けのため、クラブキーを脇に抱えようと手を伸ばしたその時である。



 グッ



「?」



 体が動かない。


 独多がクラブキーを見捨てて音響兵器を行使したのだろうか? 俺の動きを止めるほどの高出力で?


 いや、違う。



 グググッ



 浮いていく。俺の体が。


 なんだこれは?


 部屋を落下させた?


 だがクラブキー達の体は浮いていない。


 磁力? 超電導?


 スキル?



「クラブキー君を殺させるわけにはいかない」



 独多の声。肉声である。


 俺の後ろに独多乃緒本人が居る。


 振り向く。


 そこには白衣に身を包んだ短髪の少女が居た。


 目の下に隈。不健康そうな顔色。


 だが半目の状態でじとっとこちらを見てくるその顔は、美少女と言って差し支えない。


 少女に対して観察スキルを行使する。



 レベル:3

 種類 :超能力者



 ……。



 ハッ!


 いかん。一瞬ポカンとしてしまった。


 超能力者? サイキック? ウェイザー?


 馬鹿な。そんなものが本当に存在……するのか。


 プルフェや異界化、ファンタシーゾーンを既に見ている俺にとっては今更である。



 独多乃緒は超能力者だった。


 今俺を拘束している力は念力、サイコキネシスと言ったたぐいの物であろう。


 非常にまずい。


 浮かされてしまっては移動できない。このままサングラスとマスクを剥がれたら俺の顔が割れてしまう。



 こんなこともあろうかと、収納に入れておいた小石を出す。


 独多に小石をぶつけて念力を中断させるのだ。


 だが浮かされた状態では踏ん張ることができない。腕を振りかぶっての投石は無理がある。


 指弾だ。


 指先に小石を乗せ、独多に向かって弾く。



 キュン!

 ギュル!


「むっ!?」



 独多の周りの空間が渦上に歪む。渦の中心には俺の弾いた小石が捕らわれていた。


 念力で小石を止めたようだ。自動防御か。



「凄い威力だね。能力向上が無かったら危なかった」



 レベルアップは超能力も向上するようである。


 考察している場合ではない。次弾を指に構える。



「させないよ」


「っ!?」



 小石を落としてしまった。


 苦しい。心臓、肺等、内臓を圧迫されている。


 念力。


 手を触れずに物を動かす力。


 物を浮かせてぶつけるなどの大雑把な使い方をイメージしていたが、体内への攻撃すら可能とは。


 直接脳を破壊されでもしたらそれで終わりではないか。


 この力の前には フード付きジャンパー+5 や チノパン+5 も役に立たない。


 恐ろしい力である。



「さあ、君の力の秘密を見せて貰おう」



 俺の体が浮いたまま独多へと近づいていく。


 独多が俺に向けて手をかざす。触れるつもりだ。


 何をされる? 


 サイコメトリー? 精神感応?


 独多がこれらの力を持っていた場合、プルフェの存在を知られてしまう。


 それだけは避けなくてはならない。


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