表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灯火の魔導師  作者: 稲葉 鈴
20/28

エディのローブ -3

前回のあらすじ

仕立て屋さんに行く前に、エディは今日も教会の学校に来ています

午前中は算数でした

 ペリーヌが昼時の手伝いを終えて戻ってきて、午後の授業が始まった。

 午後の授業は二人一組になり、年長組が年少組に絵本を読む、というものだった。といってもただ読み聞かせるだけではなく、文字の一つ一つ、接続詞の一つ一つを教えるのが目的である。


「それではペリーヌさんがマノロ君に、ヨハネス君がエディ君に教えてあげてくださいね」


 教室には何冊か絵本が置いてあり、それを使う。


「まずは私が読みましょう。ペリーヌさんとヨハネス君は、どう説明するのか考えながら聞いてください。エディ君とマノロ君は、今は楽しんでくださいね」


 タノ司祭が選んだ本は、ものの名前の図鑑と、この辺りの昔話だった。図鑑といっても分厚くはなく、すぐに覚えてしまえるほどのものだ。

 そういえば、自分達が最初にこの教室でお話の授業を受けたときも同じだったなと、エディ以外の三人は思い出していた。ペリーヌとヨハネスはマノロが入ってきた時にも同じように思ったものだったけれど。


「まずは、こちらの図鑑から読みましょうか」


 ページを開いて、子供たちに見えるように本を抱える。ひとつのページにひとつ絵が描いてあり、そこに単語が描かれているものだ。

 タノ司祭は綴りを読み上げて、それから単語を読み上げた。


「エム、エー、エル、ユー、エム。マーロウ」


 そのページには赤い果実(リンゴ)が描かれていた。

 全てのページを読み終わったタノ司祭は、その本をヨハネスに渡した。この後、もう一冊の本を読み終わったら、ヨハネスがエディと一緒にこの本で勉強をするからだ。

 ひとこと、ふたこと、タノ司祭はヨハネスに注意事項を伝えて、次の本を手に取った。


「むかし、むかしのおはなしです」


 椅子に腰掛け、タノ司祭はエディ達の方に先程と同じように絵本を見せながら読み上げた。

 それは、この街に古くから伝わる物語。火を吹く蜥蜴トカゲと、最初の灯火ともしびの魔法使いの物語だ。

 火に愛された彼は、火吹きトカゲの火をものともしなかった。おそらく実際はとても熱かっただろうけれど、それでも、彼はそこにあり、火吹きトカゲから街を守った。そして代々、彼の家系は、この街を護り続けている。


「これって……」

「ええ、ヴィムさんのおうちのお話ですね」


 エディは目を瞬いた。

 そういえば、祖父もこの街を護る灯火ともしびの魔導師だと言ってはいなかったか。いっていたような気がする。この街を守護していた祖父が引退する際に呼び戻されたのだと。

 タノ司祭は今度は読み終わった本を、ペリーヌに渡した。先程ヨハネスに渡した本と比べると、格段に文字数も多いし、ページ数も多い。途中でマノロは飽きてしまうかもしれないが、無理はしなくて良いと伝える。

 分かって読めると楽しいが、分からず読めないと楽しくないものだからだ。


 四人はそれぞれ席を移動して、マノロの前にペリーヌが、エディの前にヨハネスが着席した。ヨハネスは机の上に先程の絵本を開いて、エディに黒板を用意するように伝えた。


「この絵本は、書き取りの授業の練習のようなものだよ。絵があった方が、それがなんだか分かりやすいだろう?」

「うん、そうだね。間違えたら、教えてくれる?」

「大丈夫だよ、そのために僕が一緒に見てるんだから」


 それもそうかとエディは少し笑って、気を張りすぎないようにして、黒板にアルファベットを写す作業を開始した。所々でヨハネスが教えてくれるから、一人でやるよりも分かりやすかったし、楽しかった。

 ヨハネスが教えてくれたことは例えば、この文字のこのカーブは大きい方が分かりやすいとか、そういうことだった。


 向こうの机では、ペリーヌがマノロに同じように、しかしエディたちよりは難しいことをしていた。あちらは単語だけではなく、文章の書き方を覚えるためだからだ。


「それでは、少し早いですが今日はここまでにしましょうか」


 エディたちとマノロ達の両方の進捗状況を見ていたタノ司祭が、そう言って声をかけてきたときには、エディ達は図鑑の二周目の書き取りを終えたところだった。

 マノロとペリーヌは一冊のちょうど半分まで来たところだったけれど、キリはよかった、かもしれない。

 ペリーヌはともかくとして、マノロはそろそろ頭の中がごちゃごちゃになってきていた。ペリーヌが悪いわけではないし、最初の内はそれなりに分かってもいたのだけれど。この昔話は、そのつもりになって読むと勉強にとても適したテキストだった。そういう風に作られたのか、たまたまなのかは最早わからないが。


「エディ君は、今日は門のところでヴィムさんと待ち合わせでしたね」

「はい、そうです。仕立て屋さんに、僕のハーフマントを注文しに行くんだそうです」

「そうですか。それはより一層、勉強に身が入りますね」


 タノ司祭は、そう言って笑った。

 

「はいっ!」


 タノ司祭の言うことは、とても正しかった。

 真面目に勉強していることを師匠せんせいに認められたようで、エディは嬉しかったのだ。適度に誉められることは、モチベーションに直結する。ただ、それだけのことだ。


私は教員でもなければ子供がいるわけでもないので、どういう授業をしたら良いのかとても悩みますね


次回更新は木曜日18時です


20190924 誤字修正しました

なんでかこの後が心愛とになりたがるんだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ