桜の国チェリンと七聖剣【百六十九】
「「バッカスさん……っ!」」
アレンとリアは同時に叫び、
「……ッ」
「う、嘘だろ……バッカスのおっさん……っ」
「そん、な……」
シィ・リリム・ティリスの三人は顔を真っ青に染め、思わず足を止めてしまった。
しかし、それも無理のない話だろう。
いくら優れた剣士とはいえ、アレンたちはまだ十代の学生。
目の前で知人が惨殺された――そのあまりに過酷な現実を受け止めるには、彼らはいささか以上に若過ぎたのだ。
(くそ、くそ、くそ……ッ)
アレンの心に仄暗い憎しみが灯り掛けたそのとき、
「――いいから走れ! お爺様の稼いでくれたこの貴重な時間を、決して無駄にするなッ!」
ローズの鋭い号令が響いた。
彼女は血が滲むほどに拳を握り締めながら、唯一の脱出手段である飛空機のもとへひた走る。
「「「「「……っ」」」」」
その心中を察し、その覚悟を見せつけられたアレンたちは――奥歯を食いしばって走り出した。
そんな彼らのもとへ、フォンとディールの魔の手が迫る。
「――悪いが、これで終わりだ」
「旦那ぁ、もう逃がしやせんよぉ……!」
砂剣と毒剣。
とてつもない霊力の込められた二振りは――。
「貴様、何故……ッ!?」
「いやいや、さすがにそれはあり得んでしょう!?」
アレンたちと正反対の方向へ、振るわざるを得なかった。
「桜華一刀流――夜桜ァ゛!」
突如背後から出現した白髪の巨漢は、鬼の形相で袈裟斬りを放つ。
「ぐ……っ!?」
「これは重い、ですねぇ……ッ」
バッカスの斬撃をなんとか防いだフォンとディールは、大きく後ろへ跳び下がりながら、その衝撃を殺しきる。
「バッカスさん……ッ!」
アレンの歓喜の声に対し、バッカスは「先を急げ」とばかりに顎で返事をした。
「はぁ゛はぁ゛……っ。ば、ばらららら……ッ! たかだか心臓を潰した程度で、この儂が死ぬとでも思うたか!」
確かに心臓を貫かれたはずの彼は、憔悴しきった表情を浮かべながら、それでも『一騎当千』の剣気を放っていた。
「なるほど。その異常なまでの回復力こそが、幻霊<億年桜>の真髄というわけか……っ」
「いやぁまさか、心臓を潰しても死なないとは……。『不死身のバッカス』、その二つ名に偽りなしですねぇ……」
フォンとディールは強い警戒を露わにしながら、ゆっくりと剣を構えるのだった。
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