桜の国チェリンと七聖剣【百六十六】
彼の視線の先にあったのは、仰向けに倒れたリア。
鮮血に染まった姿はあまりに痛々しく、思わず目を背けたくなってしまう。
しかし、心を強く持って目を凝らせば――『大きな異変』を発見することができた。
彼女の足首には『木の根』がクルクルと巻き付いており、そしてなんとお腹のあたりがゆっくりと上下しているのだ。
「り、あ……?」
俺は重たい体を引きずって、ゆっくりと足を進める。
彼女のきめ細かい肌には張りと血色が戻っており、耳を澄ませばスーッスーッという小さな呼吸音が聞こえてきた。
「は、はは……。これは……夢か?」
恐る恐るリアの胸に手を置けば、ドクンドクンという規則的で力強い鼓動を感じられた。
「まさか、本当に……こんなことが……ッ」
望外の奇跡に打ち震えていると――彼女の瞼がわずかに揺れ、美しい紺碧の瞳が露わになる。
「ん、んん……。アレ、ン……?」
「……リアッ!」
「え、わ、きゃ……っ!?」
俺は衝動的に彼女の体をギュッと抱き寄せた。
「……よかった。本当に……よかった……ッ」
様々な感情が止めどなく込み上げ、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「ちょ、ちょっとアレン!? 周りの視線もあるから、こういうのは二人っきりのときに……って、あれ……? 私、どうして生きているの……?」
リアは顔を真っ赤にした後、不思議そうに小首を傾げた。
おそらく、目が覚めたばかりで状況を把握できていないのだろう。
「あぁ、それはだな――」
俺が簡単に事情を説明しようとしたそのとき、
「うっ、私は……? ハッ……敵はどこだ!?」
「確か、未知の毒にやられて……。そうよ、ディールとフォンは!?」
ローズと会長が素早く立ち上がり、
「……あり? なんだったんだ、今のは……? もしかして、夢か?」
「億年桜に叩き起こされたような……? うぅ、なんか頭がグワングワンするんですけど……」
それに続いて、リリム先輩とフェリス先輩もゆっくりと上体を起こす。
「ローズ、会長、リリム先輩、フェリス先輩……!」
彼女たちの体に浮かんだ紫色の紋様は、綺麗さっぱり消えており、その足首にはリアのと全く同じ、細い木の根が巻き付いていた。
「ばららら、ら……げほがふ……っ。ようやく、目を覚ましたか……。元気そうで何よりじゃ」
バッカスさんは苦しそうに咳き込みながらも、ホッと安堵の息をつく。
その声に強い反応を示したのは、彼の能力を正確に把握しているであろうローズだ。
「この『根』……。もしかしてお爺様、<億年桜>を使ったのですか……!?」
いち早く状況を理解した彼女は、顔を真っ青に染めてそう問い詰めた。
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