桜の国チェリンと七聖剣【百五十二】
「<九首の毒龍>の毒性は、<英雄殺しの劇毒>なんかとは比べ物になりやせんからねぇ……。いくら旦那が丈夫とはいえ、そう長くはもちませんよぉ?」
「――そうか、じゃあ急がないとな」
俺は凄まじい痛みを噛み殺し、力強く地面を蹴り付け――一足で互いの間合いをゼロにした。
「……は?」
「七の太刀――瞬閃ッ!」
バッカスさんとの修業を経て、さらなる進化を遂げた神速の居合斬り。
それを目の当たりにしたディールは、
「――うおぉっとぉ!?」
大きくバックステップを踏み、限界ギリギリまでお腹をひっこめ、間一髪のところで回避してみせた。
(くそ、仕留め損ねたか……っ)
さっきのとんでもない加速、たった今見せた超人的な反応速度……。
『真装』を展開したことによって、奴の基礎的な身体能力は信じられないほど上昇しているようだ。
「い、いやいやいや……。<九首の毒龍>の猛毒を食らって、即反撃ってあんた……。さすがにそれは、人間やめ過ぎでしょ……」
ディールは珍しく真剣な表情で、そんな感想を漏らしたのだった。




