桜の国チェリンと七聖剣【百四十九】
(なん、だ……これは……!?)
闇の影の直撃を受けた奴は、もう立っているのがやっとのはずだ。
(それなのに……いったいどうして、こんなにも強大な『圧』を放っているんだ……!?)
俺はかつてないほど警戒を高め、黒剣を力強く握り締めた。
すると次の瞬間、
「起きろ――<九首の毒龍>ッ!」
ディールの全身から汚泥のような紫が浮かび上がり、それはやがて九つの首を持つ巨大な龍と化した。
「な、ぁ……っ」
見ているだけで吐き気を催す邪悪な霊力は、瞬く間に膨れ上がっていく。
俺はこれまで、たくさんの強敵と剣を交えてきた。
ドドリエル・ザク・フー・レイン・グレガ――全員、恐るべき実力の持ち主だった。
(だけど、目の前のこれは……違う……ッ)
ディールの展開したこの力は、これまでとは明らかに性質を異にするものだった。
「ま、まさかこれが――」
その言葉を繋いだのは、
「――『真装』。魂装を極めた者だけがたどり着く、剣士としての極致でさぁ」
いつの間にか、俺のすぐ真横に立っていたディールだ。




