桜の国チェリンと七聖剣【百四十七】
とてつもない破砕音が響き渡り、砂煙が視界を埋め尽くす。
(……よし、手応えありだ)
ギリギリまでディールの体を注視していたが、毒の防膜は間に合っていなかった。
闇の影の直撃、相当大きなダメージを負ったはずだ。
(さて、次はどう動く……?)
それから少しの間、砂煙の方へ意識を集中させていると――不自然な霊力の揺らぎを感知した。
(この感じは……アレか!)
奴の目論見を一瞬で看破した俺は、すぐさま黒剣に闇を集中させる。
「一の太刀――飛影ッ!」
漆黒の斬撃は、砂煙を蹴散らしながら突き進み――ディールの体を一刀両断した。
同時にそれは紫色の液体と化し、その背後から傷だらけの『本体』が姿を見せる。
「毒の分身を作り、回復する時間を稼ぐつもりだったんだろうが……同じ手は二度も通じないぞ?」
「だ、旦那ぁ……ッ」
奴は奥歯を噛み締め、憎悪に満ちた目を向けた。
その体にはいくつもの深い傷が浮かび、絶えず赤黒い血が滲み出している。
とてもじゃないが、戦闘続行は望むべくもない。
つまりは――勝負ありだ。
「今すぐローズたちの毒を消して、大人しくお縄に就くのなら……命だけは見逃してやる」
そうして俺は元皇帝直属の四騎士ディール=ラインスタッドへ、『最後通告』を突き付けたのだった。




