桜の国チェリンと七聖剣【百四十三】
(……なるほど、そういうことか)
やはりというかなんというか、ディールは俺が信じた通りの男だった。
(なんにせよ、ネタさえ割れればこっちのものだ!)
冥轟の構えを解き、すぐさま大上段に黒剣を構える。
「五の太刀――断界ッ!」
刹那、世界を断ち斬る最強の一撃は、ディールの思惑ごと全てを斬り伏せた。
毒龍の大顎は、空間の歪に呑み込まれ――紫一色に埋め尽くされた視界が一気に開ける。
「な、何故……!?」
予想外の展開を前にした奴は、わかりやすいほど狼狽していた。
俺はその隙を逃さず、一足で互いの間合いをゼロにし、
「――終わりだ」
「か、はぁ……ッ!?」
ディールの胸に深々と黒剣を突き立てた。
「あ、ぐぅ……っ。はぁはぁ……ッ!」
口の端から赤黒い血を垂れ流した奴は、胸を穿つ黒剣をギュッと握り締め、ギロリとこちらを睨み付けた。
「だ、旦那ぁ……。どうして冥轟を打たなかったんですかぃ……?」
「よくよく目を凝らしてみれば、毒龍の大顎の中に『不自然な球体』を見つけたんだよ。どうせ衝撃を与えた瞬間、内部の猛毒が飛び散る『仕込み』だろ?」
「……ッ」
おそらく、図星だったのだろう。
奴は悔しそうに奥歯を噛み締めた。




