桜の国チェリンと七聖剣【百四十一】
無傷の俺は視界の中央にディールを据え、正眼の構えを堅持した。
その一方、
「はぁはぁ……っ」
奴は苦悶の表情を浮かべたまま、荒々しい息を繰り返す。
その体には四肢の裂傷・左肩の刺し傷・腹部の打撲などなど、いくつもの生々しい傷が目立った。
「いやぁ困った困ったぁ……。残念ながら、接近戦では分が悪いようです……ねぇッ!」
ディールが天高く魂装を掲げれば――その切っ先へ、禍々しい霊力が集まっていく。
(……デカいな)
突き刺すような圧迫感、大気を震わせるほどの出力。
次に放たれる一撃は、かなりの霊力が込められた大技と見て間違いない。
単純な剣術勝負では勝ち目がないと踏んだ奴は、自慢の猛毒で一気にケリを付けに来たようだ。
(しかし、この立ち位置……。ディールめ、狙ったな……ッ)
俺のちょうど真後ろには、リアと猛毒に侵されたローズたちの姿があった。
もし奴の放つ特大の一撃を回避しようものならば、致死性の猛毒が彼女たちへ襲い掛かる。
つまり――次の一撃に限り、俺は絶対に真っ正面から受けきらなければならない。




