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桜の国チェリンと七聖剣【百三十九】
「鍔迫り合いになって、膠着状態に陥った今なお治療を始めないということは……。猛毒の裏転を使うには、特別意識を集中させる必要があるということか」
それはすなわち――俺が攻撃の主導権を握っている間、奴が回復できないことを意味する。
この情報を早い段階で得られたことは、大きなアドバンテージと言えるだろう。
「……アレンの旦那ぁ、あなた本当にやりにくい相手ですねぇ」
ディールは苦々しい表情で、しみじみとそう呟いた。
色の薄いサングラスの奥では、大きな灰色の瞳がギロリとこちらを睨み付けている。
「あぁ、誉め言葉として受け取っておく、よ……ッ!」
「……っ」
単純な腕力によって鍔迫り合いを制した俺は、ディールに回復の隙を与えないようにひたすら前へ前へと突き進んだ。
「はぁああああ!」
袈裟切り・唐竹・切り上げ・切り下ろし・突き――時にフェイントを織り交ぜながら、しっかりと緩急を付けながら、俺はありとあらゆる斬撃を様々な角度から繰り出した。




