桜の国チェリンと七聖剣【百三十六】
「ふ、ふふ……っ。いやぁそれにしても、今のは本当に危なかったぁ……。後コンマ数秒防御が遅れていたら、塵も残らなかったでしょうねぇ……」
ディールは胸部の傷口に手をかざし、ねっとりとした口調で荒い息を吐いた。
「そのまま塵になってくれてたら、みんな大助かりなんだけどな」
「くく……っ。アレンの旦那も意外に攻めっ気がお強い……。これは案外、あっしと気が合うかもしれやせんねぇ?」
奴は気持ちの悪いことを口にしながら、不気味な笑みを浮かべた。
「かなりの深手を負った割に、随分と余裕そうだな」
「えぇまぁ、回復能力にはちょいとばかり自信があるもんで――猛毒の裏転」
その瞬間、奴の胸元に紫色の液体が集中し――そこにあった大きな太刀傷は、たちまちのうちに塞がった。
「……なるほど」
「『毒薬変じて薬となる』。並大抵の攻撃じゃ、あっしを殺すことは不可能でさぁ」
会長たちの合わせ技も、バッカスさんの斬撃も、やはり無傷で凌いだわけじゃなさそうだ。
おそらくはある程度のダメージを負った直後、あの能力で即座に完全回復を果たしたのだろう。
(食らえば一撃必殺の猛毒に加え、持久戦向きの回復能力……)
魂装<英雄殺しの劇毒>は、思っていたよりもずっと厄介な力のようだ。




