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桜の国チェリンと七聖剣【百三十五】
「ばらららら! 小僧め、随分と派手にやっとるのぅ!」
「……『特級戦力』アレン=ロードル、か」
バッカスさんとフォンの呟きが、風に乗って聞こえてきたが――俺はその情報を遮断し、目の前の敵に集中する。
「はぁはぁ……。は、ははは、さすがはアレンの旦那……。弱っていたとはいえ、あのレインの旦那を斬り伏せただけのことはありやすねぇ……。ただの『魂装』でこの出力とは、本当に末恐ろしい御方だぁ……」
ゼロ距離から冥轟を食らったディールは、随分と懐かしい名前を口にしながら、ゆっくりと立ち上がった。
その体には赤黒い太刀傷が深々と刻まれており、瀕死の重傷であることは誰の目にも明らかだ。
「……よく間に合わせたな」
「そりゃまぁ、生きるか死ぬかの瀬戸際でしたからねぇ……。相当量の霊力を注ぎ込んで、無理矢理に毒の防膜を展開したんでさぁ……」
あのとき――奴はすんでのところで紫色の防膜を纏い、なんとか冥轟の直撃を免れていたのだ。




