桜の国チェリンと七聖剣【百三十三】
「だ、駄目よ! 相手は元皇帝直属の四騎士。しかも、たったの一撃でみんなを戦闘不能にした、恐ろしい毒使いなのよ!? いくらアレンでも、一人じゃ危険過ぎるわ!」
「だけど、誰かがみんなを守らなきゃいけない。戦闘の余波から、そして何より――ディールとフォンから」
敵は犯罪組織の幹部とそこへ身売りした剣士。
そんな奴等に『正々堂々』なんて期待できない。ほんの少しでも旗色が悪くなれば、なんの躊躇もなく身動きの取れない彼女たちを狙うだろう。
「そ、それはそうかもしれないけれど……」
「それに……今はあまり加減ができそうにないんだ。下手をしたら、リアを巻き込んでしまうかもしれない。――だから、お願いできないか?」
俺は烈火の如き激情を呑み込みながら、静かに言葉を紡ぐ。
(これ以上はもう……限界だ……ッ)
大切な仲間の苦しそうな声を聞くのも、ディールの耳障りな喋りを耳にするのも、あの芝居がかった動きを見るのも――もう我慢ならならない。
「……わかったわ。でも、絶対に無茶だけはしないでね……?」
リアはそう言って、後ろへ跳び下がり――ローズたちの守りに専念してくれた。
「あぁ、ありがとう」
俺は短くそう呟き、ディールの前に歩みを進めた。




