360/445
桜の国チェリンと七聖剣【百三十一】
毒ガスの影響を免れた俺とリアは、全滅の危機を回避したことにホッと安堵の息を漏らした。
(だけど、今やもう二対一だ……)
まだまともに剣すら交えていないにもかかわらず、あっという間に四人が戦闘不能。
(猛毒に伏したローズたちを、まさかそのまま放っておくわけにはいかない……)
俺かリアのどちらか一人が、戦闘の余波から彼女たちを守る必要がある。
(つまり、『実質一対一』か……)
こちらの手中にあった数的有利は雲の彼方に消え、戦闘開始前ディールが言っていた通りの状況になってしまった。
刻一刻と悪化していく戦況の中、チラリと横に目をやれば、
「桜華一刀流――夜桜ッ!」
「――砂崩しッ!」
バッカスさんとフォンは、息もつかせぬ剣戟を繰り広げていた。
二人の戦いは互角……いや、わずかにバッカスさんが押している。
だけど、助力を期待できるほどの余裕はなさそうだ。
(……やるしかない、か)
俺は小さく息を吐き出し、元皇帝直属の四騎士と一対一で斬り合う覚悟を決めた。




