359/445
桜の国チェリンと七聖剣【百三十】
「あっしの毒は、揮発性が高いもんでねぇ。常温・常圧下では、すぐに気化しちまう。――まぁ早い話が、そこのお嬢さん方は毒ガスでやられちまったってことでさぁ」
「「……ッ!?」」
俺はすぐさま左手で、リアはハンカチで自分の口元を押さえた。
もう遅いとはわかっているが、とにかく行動せずにはいられなかったのだ。
すると――その様子を目にしたディールは、愉快げに手をパタパタと横へ振る。
「くくく、今更そんなことをしたって無駄ですよ? アレンの旦那もリアのお嬢も、既にたぁっぷりと吸い込んでいやすから」
奴は凶悪な笑みを浮かべた直後、俺たちの全身を上から下までねっとりと見つめ――やれやれと言った風に肩を竦めた。
「ただまぁ……気化して毒性の薄れたものじゃ、お二人には効き目が薄いらしぃ。アレンの旦那はともかくとして、リアのお嬢さんも中々に丈夫な体をしていらっしゃる。ひょっとすると幻霊原初の龍王の自己防衛機能が働いているのやも知れませんねぇ……」




