桜の国チェリンと七聖剣【百二十六】
フォンと向き合ったバッカスさんは、チラリとこちらへ視線を向けた。
「――よく聞け、小僧。ディールのような『毒使い』の能力は、大きく分けて二つ。この世に存在する毒を生み出すか、全く未知の毒を生み出すか、じゃ。ほぼ全ての毒使いは前者に属するが、極稀に後者の能力を持つ者がおる」
彼はさらに話を続けていく。
「両者を見分ける方法は一つ、『回復系統の魂装が、その毒を無効化できるかどうか』。――小僧の闇で治療できんかったことから見て、敵の能力は『未知の毒』を生み出す厄介なタイプだのぅ」
「どうにかして、その毒を消す方法はないんですか!?」
「未知の毒は、本来この世に存在しない物質。それが術者の霊力を依り代として、一時的に具現化しただけに過ぎん。つまるところ、霊力の供給源を――術者の意識を絶てば、毒はたちまちのうちに消滅しおる!」
「つまり、ディールを倒しさえすれば……リリム先輩とフェリス先輩は助かる!」
「そうじゃ。仲間を失いたくなければ、一刻も早く目の前の敵を斬り伏せぃ!」
誰よりも戦闘経験の豊富なバッカスさんは、貴重な助言を残し――フォンとの激闘に身を投じたのだった。




