桜の国チェリンと七聖剣【百二十五】
「ぬるいわ! 桜華一刀流――連桜閃ッ!」
バッカスさんはすぐさま反転し、まるで閃光のような突きを連続して繰り出した。
繊細かつ力強いその突きは、迫りくる全ての砂剣を貫き、
「ぐっ……!?」
フォンの体にいくつもの裂傷を刻み付けた。
手痛い反撃を食らった彼は、大きく後ろへ跳び下がり、静かに息を整える。
(す、凄い……っ)
モップではなく、真剣。立ち合いではなく、殺し合い。
戦場に立ったバッカスさんは、まさに圧倒的な存在感だった。
すると、
「――ちょ、フォンの旦那ぁ!? その化物は、しっかり押さえといてくださいよ! 危うく死ぬところだったじゃないですか!?」
つい先ほど全身を強打したばかりのディールが、珍しく真剣な表情で抗議の声をあげた。
よほど丈夫な体をしているのか、それとも何か隠し持った能力があるのか……奴は依然として無傷のままだ。
ディールから激しい抗議を受けたフォンは――そちらへ一瞥を送ることもなく、ただバッカスさんと向き合っていた。
「……驚いたぞ。老いさらばえ、病魔に侵されてなお、それほどの強さがあるとはな……。さすがは、かつて世界最強と呼ばれた剣士だ」
「全盛期の儂ならば、今ので二人とも仕留めておったのじゃが……。やれやれ、年は取りたくないのぅ……」
二人は思い思いの感想を口にしながら、油断なく剣を構えた。




