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桜の国チェリンと七聖剣【百二十四】
「ぬ゛ぅん……ッ!」
大きく振りかぶられた太刀から、凄まじい横薙ぎが繰り出される。
「……ッ!?」
ディールは顔を真っ青に染めながらも、振り向きざまにしっかりと魂装で防御した。
(……さすがに巧いな)
流れるような足捌き、刹那で斬撃を見切る目。
元皇帝直属の四騎士というだけあって、基本的な能力は非常に高い。背後を取られた後のリカバリーが、恐ろしいほどに正確だ。
しかし、咄嗟の防御で防ぎ切れるほど、バッカスさんの攻撃は甘くない。
「ばらららら、軽い軽い!」
その衝撃を受け止め切れなかったディールは、
「こ、こいつはやばいですねぇ……ッ」
地面と水平に吹き飛び――遥か遠方の大木に全身を打ち付けた。
「まだまだ終わらんぞぉ!」
バッカスさんが容赦なく追撃を仕掛けようとした次の瞬間、額から血を流したフォンが天高く跳び上がった。
「『七聖剣』を舐めるなよ……! ――砂の宝剣ッ!」
彼の叫びに呼応し、二十を超える砂状の剣が目にも留まらぬ速度で放たれた。




