桜の国チェリンと七聖剣【百十九】
「おぉおぉ、これはまた凄まじい霊力のほとばしりでございやすねぇ!」
ディールは凶悪な魂装を地面に突き立てたまま、パチパチパチと大袈裟な拍手を送った。
「ふふっ、その余裕な態度がいつまで続くかしらね? ――水精の悪戯ッ!」
会長が天高く剣をかざせば、剣・斧・槍・盾・鎌――様々な形状に変化した水の凶器が、ディールの周囲を球状に取り囲んだ。
「リリム!」
「あぁ、任せとけ! 飛び散れ、炸裂粘土ッ!」
リリム先輩が横薙ぎの一閃を放てば、大量の起爆粘土が空中に舞い上がり、水精の悪戯に絡みついていく。
その結果、鉄の硬度を持つ水の武器は、とてつもない威力を誇る『爆弾』と化した。
あれが一気に殺到するとなれば、元皇帝直属の四騎士とはいえ、ただでは済まないだろう。
「これでも――」
「――食らいな!」
会長とリリム先輩の合わせ技が、ディール目掛けて一斉掃射される。
「こりゃぁ大層な攻撃ですが、ちぃとばかし『速度』に難がありやすねぇ……」
彼が<英雄殺しの劇毒>を抜き、迎撃に乗り出した瞬間、
「……っ!?」
その動きは、不自然に止まった。
否、止められていた。
「ふふっ、ちょっと『上』ばっかり注目し過ぎなんですけど?」
よくよく見れば――フェリス先輩の念動力の糸が地を這い、彼の両足を拘束している。
「あららのら、こいつは困りやしたね……」
ポツリとつぶやきが漏れた刹那、凄まじい大爆発がディールの全身を飲み込んだ。




