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桜の国チェリンと七聖剣【百十七】
ディールの展開した魂装<英雄殺しの劇毒>。
それはひどく歪な形をしていた。
鋭利な刃先はまるで鋸のようにギザついており、峰の上部には鎌の如き大きな刃が三つ、下部には尖った針山があった。
ただただ誰かを傷付けることだけを望まれた、恐ろしくもおぞましい魂装だ。
しかもよくよく見れば、その刃先には謎の液体がてらてらと輝いている。
「あの独特な形状、刀身を伝う液体……十中八九『毒』と見て間違いないわね」
知識の豊富な会長は、俺たちだけに聞こえるよう小さな声でそう呟いた。
すると、
「さすがはアークストリア家の御令嬢、えらく博識なこってぇ。まさか魂装の形状だけで、あっしの能力を見抜かれちまうとは……いやぁ、困った困ったぁ」
ディールはわざとらしい困り顔を浮かべ、大きく肩を竦めた。
「……女の話を盗み聞きするなんて、不埒な男ね」
「あはは、すいやせん。昔から耳だけは異常にいいもんで、どんな音でもひょいひょいと拾って来ちまうんでさぁ」




