桜の国チェリンと七聖剣【百十六】
「そういうわけで……あんさんらの相手は、このあっしが務めさせていただきやす。――元皇帝直属の四騎士ディール=ラインスタッド、以後お見知りおきなすってぇ」
彼は人懐っこい不気味な笑みを浮かべ、色の薄いサングラスを中指でクイッと上げる。
それに対し、俺たちは素早く戦闘態勢を取った。
どんな攻撃が来ても対応できるよう重心を落とし、いつでも魂装を展開できるよう精神を集中させる。
「……ありり? てっきり自己紹介をし返してくれるもんかと思いやしたが……。なんかそんな空気じゃなさそうですねぇ……」
ディールはがしがしと頭を掻き、肩を揺らして苦笑した。
「一対六だが、悪く思ってくれるなよ……?」
これから始まるのは、決して稽古や試合なんかじゃない。
文字通り、『命』の取り合いだ。
数的有利はこちらの大きな強み。それを十全に活かして、立ち回らせてもらう。
「えぇ、もちろんもちろん。お好きになすってくだせぇ。……と言ってもまぁ、『実質一対一』みたいなもんですがねぇ?」
彼は「くくく」と笑いながら、ただ一人――俺だけをジッと見つめた。
「さてさてさてと……そんじゃそろそろ、やりやしょうかぁ? 蝕せ――<英雄殺しの劇毒>」
彼が大きく両手を広げたその瞬間、空間を引き裂くようにして紫色の剣が姿を現した。




