桜の国チェリンと七聖剣【百十五】
「『特級戦力』アレン=ロードルに幻霊原初の龍王の宿主リア=ヴェステリア。この二人を手土産に持ち帰りゃぁ、バレル陛下もきっとお喜びになられるでしょう。ですんで、億年桜のついでに回収しちまってもいいですかぃ? いやもちろん、旦那の手は煩わせません。あっしの方で、ちゃぁんと全部やっておきますから」
ディールはそう言って、口元を醜悪に歪めた。
その瞬間、身の毛もよだつような悪寒が全身を駆け抜ける。
(こいつは……危険だ……っ)
これまで感じたことのない、ただただ『醜悪な霊力』。
霊力というのは、その人の気質を映し出す『鏡』のようなものだ。
(リアの霊力は陽だまりのように温かく、ローズのはどこまでも清らかで澄み切っている)
それに対して、このディール=ラインスタッドという男の霊力は……汚れて、いやもはや穢れていた。
「……好きにしろ。だが、手土産にするつもりならば、あまりやり過ぎるなよ? 貴様の能力は、『殺し』に特化し過ぎている」
「いやだなぁ、わかっていやすよ。ちゃんと『原形』ぐらいは残るようにするんで、そんなに心配せんでくださいや」
ディールは朗らかに笑い、俺たちの前に立ち塞がった。




