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桜の国チェリンと七聖剣【百十四】
「「……」」
バッカスさんとフォンは、互いに睨み合ったまま動かない。
二人の間には濃密な殺気が渦巻き、重苦しい沈黙が場を支配する。
まさに一触即発の空気が流れる中、
「――フォンの旦那ぁ。ちょいとばかしご相談したいことがあるんですが、今ちょっとお手すきですかぃ?」
どこか間の抜けたディールの声が、嫌に大きく響いた。
「……馬鹿が、両の節穴をよく凝らせ。手が空いているように見えるのか?」
「またまたそんなこと言ってぇ、旦那の能力なら問題ないでしょうよぉ? 何せ互いの『相性』は抜群なんですからぁ」
「……いいから早く用件を言え。これ以上無駄口を叩くつもりなら、まずは貴様から始末するぞ」
「す、すいやせん。わかりやしたから、そんな怖い顔で睨まんでくださいよぉ……。いやね。さっき旦那が砂爆で吹き飛ばそうとした六人組……よくよく見りゃ、中々の粒揃いなんでさぁ」
彼はそう言って、まるで『品定め』をするかのようにジィッとこちらを見つめた。




