桜の国チェリンと七聖剣【百十三】
「……有効活用じゃと?」
「あぁ。貴様の体から霊核を引き剥がし、より強い剣士へ分け与えるのだ」
フォンは涼しい顔をして、信じられない言葉を口にした。
(れ、霊核を引き剥がす……!?)
帝国の研究は進んでいると聞くけれど、本当にそんなことが可能なのか?
いや、それよりも霊核を抜かれた『宿主』はどうなるんだ?
しかも、『より強い剣士へ分け与える』って、いったいどういうことだ?
いくつもの疑問が俺の脳裏をよぎる中、
「――とにかく、これは最後通告だ。バッカス=バレンシアよ。無駄な抵抗はやめて、大人しく帝国へ来い」
フォンは強い口調でそう言い放った。
「うぅむ、難しいことはちぃとよくわからんが……。まぁ、あれじゃ……バレルの阿呆に伝えておけ。雑魚を何度寄越したところで儂の首は獲れん、とな」
バッカスさんはその通告をまともに取り合わず、羽虫を払うかのように手を振った。
「……そうか。平和的な解決を図れればと思ったのだが、仕方あるまい。『正義』の名のもと、その首ごともらい受けるとしようか」
小さなため息を漏らしたフォンの右手には、いつの間にか砂状の剣が握られていた。




