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桜の国チェリンと七聖剣【百十一】
(『幻霊』って確か、遥か昔に世界中を恐怖のどん底に叩き込んだ化物の総称……だったよな?)
二か月ほど前――神聖ローネリア帝国の書庫で交わした、神託の十三騎士フー=ルドラスとの会話が脳裏をよぎる。
奴の話によれば、いくつかの国々は幻霊を秘密裏に捕獲し、巨大な戦力として隠し持っているそうだ。
そして現在――黒の組織は幻霊の回収に熱を入れているらしく、リアの中に封じられた原初の龍王を狙って、これまで何度も刺客が送られてきた。
(だけど、億年桜が幻霊ってどういうことだ? もしかして……あの巨大な桜の木全てが、バッカスさんの魂装なのか!?)
そうして俺が困惑していると、
「ばらららら、バレてしまってはしょうがないのぅ!」
彼は特に否定することなく、大きな笑い声をあげた。
「――しかし、一言に『回収する』と言っても、いったいどうやるつもりじゃ? まさかとは思うが……『世界最強の剣士』であるこの儂とやり合うつもりかのぅ?」
凶悪な笑みを浮かべたバッカスさんは、背筋の凍るようなおどろおどろしい殺気を放つ。