桜の国チェリンと七聖剣【九十一】
「裏切りの可能性があるのは、たったの九人ですか……。数の上では、かなり絞られていますね」
会長はコクリと頷き、話を先へ進めた。
「まずはリアさんの父グリス=ヴェステリア陛下を含めた、四大国の首脳陣なんだけど……。はっきり言って、彼らが情報を漏らすことはあり得ないわ」
「……『身売り』の線なんかは、考えられないんでしょうか?」
自分の国もしくは自分だけでもいいから、神聖ローネリア帝国へ迎え入れてほしい。その代わり、国の主権を帝国へ明け渡す。
そんな身売り話を持ち掛ける元首がいても、おかしくはないと思うんだが……。
「去年までなら、その可能性はゼロじゃなかったわ。だけど、今はもうあり得ない。だって――今年のお正月にテレシア公国の首脳陣とその配下は、全員殺されてしまったもの。大人しく白旗を揚げ、恭順の意を示したにもかかわらずね」
「……全員、ですか」
普通の神経をしていたら、無抵抗の相手にそこまではやらない。
いや、やれないだろう。
そもそも、剣士じゃない『一般人』の虐殺は国際条約違反だ。
「バレル=ローネリアは、行き過ぎた『秘密主義者』であると同時に徹底的な『完璧主義者』みたいね。ほんのわずかでも裏切りの可能性がある者は、即抹殺。テレシア公国での虐殺は、きっとクーデターの危険を恐れたのでしょうね」




