桜の国チェリンと七聖剣【八十九】
「お願いごと、ですか……?」
「そう。うちのお父さんと天子様が、どうしてもアレンくんに聞きたいことがあるみたいなの」
「ロディスさんと天子様が……。いったいなんでしょうか?」
あの二人が俺にどうしても聞きたいこと……正直、皆目見当がつかない。
「えーっとね……。二人が聞きたがっているのは、あなたとも関わりの深い『とある人物』についてのことなんだけれど……。なんというか、その……これはまだ確定したことじゃなくて、推測の域を出ない話だから……怒らずに聞いてね?」
「え、えぇ……わかりました」
会長にしては珍しく、ずいぶんと歯切れの悪い喋りだった。
(でも、俺と関わりが深い人物か……誰のことだろう?)
パッと思い浮かぶのは、リアやローズに母さんやポーラさん、後は……千刃学院のみんなだろうか。
俺がぼんやりそんなことを考えていると、会長はゴホンと咳払いをした。
「とりあえず……話がわかりやすくなるよう、簡単に『状況』を説明しておくわね。いろいろとトラブルのあった会談なんだけれど、一番の問題は『極秘中の極秘事項』である『開催場所』が、いったいどこから漏洩したのかってことなのよ」
「そうですね」
国の首脳陣が一堂に会する秘密の場所。
それが敵国へ漏れているこの状況は、絶対に看過できない。
今すぐにでも情報の漏洩場所を突き止め、迅速に対処する必要があるだろう。
「それで会談の最後には、『犯人探し』が行われたの」
「は、犯人探しですか……」
それはまた、中々ギスギスしそうな話題だ。