桜の国チェリンと七聖剣【八十六】
「ただ……四大国の意見が割れることは、そこまで大きな問題じゃないわ。もともと極秘会談が始まる前から、ある程度予想されていた事態だしね」
会長はそう言って、簡単に説明を始めた。
「『黒の組織』という圧倒的な武力を誇る、神聖ローネリア帝国。これに対抗するには、四大国が足並みを揃えなければならない。――この認識は、各国の首脳陣の間でしっかりと共有できているの」
「それはつまり……四大国の意見が一致しない限り、全面戦争は起きないということでしょうか?」
「そういうこと。ヴェステリア王国とロンゾ共和国がどれだけ強硬策を唱えようと、リーンガード皇国とポリエスタ連邦が首を縦に振らない限り、全面戦争にはならないわ。四大国の豊富な物資と各国に散らばる人類最強の七聖剣――この二つが揃って、ようやく帝国と五分に渡り合えるの」
「それだけの力が集まって、ようやく互角なんですね……」
悔しいが、やはり神聖ローネリア帝国は『世界最強の国』のようだ。
豊かな土壌・膨大な人口・進んだ科学技術に高度に発展した医療、そして何より――黒の組織という恐ろしい武力。
いったい何故、ここまでの力を持つようになったのか。
こんな超大国を長年にわたって治めている皇帝バレル=ローネリアとは、果たしてどんな人物なのか。
依然として、謎だらけの国だ。