桜の国チェリンと七聖剣【八十四】
「確か……極秘の会談は、今日の午後までに終わる予定でしたよね?」
俺がそう問い掛けると、
「えぇ、本来ならそのはずだったんだけど……。いろいろ長引いちゃって、ついさっき終わったみたいなのよ」
会長は肩を竦めながら、壁掛け時計に目を向けた。
時刻は既に夜の十時を回っている。
単純計算で十時間ほど押してしまったようだ。
「ずいぶんと掛かったんですね……。もしかして、何か問題でもあったんでしょうか?」
「ご明察。さっきの電話は、その件についての連絡だったの。ある程度予想されていた問題が起きたのと、全く想定外のトラブルが発生して……かなり『荒れた』会談になったらしいわ」
彼女はそう言って、「はぁ……」と大きくため息をついた。
どうやら中々に堪えているようだ。
「……ねぇ、アレンくん。もしよかったら、ちょっと話し相手になってくれないかしら? お姉さん、今日はなんだか心細いのよ」
「はい。俺なんかでよければ、お付き合いしますよ」
「ふふっ、ありがと。……あなたはいつも優しいわね」
会長は柔らかく微笑んだ後、
「私もまだ詳しく聞けたわけじゃないから、大きな問題が起きたところだけ話そうかしら……」
壁に背を預けながら、ゆっくりと語り始めたのだった。




