桜の国チェリンと七聖剣【七十八】
「――そういえば、明日が『最終日』じゃったかのぅ?」
バッカスさんは長い髭をワシワシと揉みながら、チラリとこちらへ目を向けた。
「はい、ここまでありがとうございました。最後の一日も、どうかお願いします」
俺がそうして軽く頭を下げると、
「むぅ……。少し、寂しくなるのぅ……」
彼は明後日の方向を向きながら、ポツリとそう呟いた。
桜の国チェリンでの春合宿は、もう明日で終わりだ。
(できることなら、バッカスさんにもっとたくさん桜華一刀流を教えてもらいたいけど……)
なかなかどうして、そういうわけにもいかない事情があった。
会長の話によれば、今日の午後には各国の首脳陣による極秘の会談が終わるらしい。
そこで話し合われたことや決議事項をもとにして、天子様とロディスさん――そしてアークストリア家の次期当主である会長が集まり、『皇族派として推し進めたい国策』を定めるそうだ。
そしてどういうわけか……その大事な会議に、俺もお呼ばれしてしまっている。
(正直、天子様についてはいろいろと思うところがあるし……。政治について、なんの知識もない俺を呼ぶ意味はわからないけど……)
いろいろとお世話になっている会長から、「お願い、アレンくん……っ」と頼み込まれたら……断るわけにはいかなかった。
そういうわけで春合宿の延長は難しく、バッカスさんに剣を学べるのは明日が最後の一日となっているのだ。




