桜の国チェリンと七聖剣【七十三】
「さ、桜を取り込んで霊核にって……そんなことが本当に可能なのか?」
霊核。それは人間の魂に宿る力の塊だ。
祖霊・幻獣・精霊など、力の源泉として多種多様な存在が確認されているけれど……いまだ詳しいことは何もわかっていない。
「さぁな。なにせ二千年以上も前に記された手記だ。その全てを信じることは難しい」
ローズは肩を竦めた後、
「実際に生きた桜など存在するかどうか。それについては、眉唾物だが……。ロックスが人ならざる『ナニカ』と契りを結んだことだけは間違いない」
真剣な表情ではっきりとそう言い切った。
「手記の記述によれば――安住の地を提供するロックスに対し、生きた桜は深い感謝を示した。それと同時にその身に住まう宿賃として、『記憶の引き継ぎ』を約束したらしい」
「記憶の引き継ぎ?」
「あぁ、そうだ。ロックスが子々孫々にわたって伝え続けたい記憶、生きた桜はそれを接いでいくと言ったそうだ」
「それって……もしかして……!?」
『剣士』が子どもに伝えたい記憶と言えば……やはりあれだろう。
「ふっ、察しがいいな。ロックスが選んだ『記憶』、それこそが一子相伝の秘剣――桜華一刀流だ」




