桜の国チェリンと七聖剣【六十七】
【七の太刀――瞬閃ッ!】
【桜華一刀流――連桜閃ッ!】
【絶剣――七虹連斬ッ!】
コンマ数秒を争い、数ミリの間合いを奪い、まばたきすらも許されない珠玉の剣戟。
(あぁ、楽しかったなぁ……)
セバスさんとバッカスさんとの斬り合いは、本当に……本当に楽しかった。
(戦闘が楽しいというとなんかゼオンみたいで、ちょっと嫌な気もするけど……)
そんなことがどうでもよくなってしまうぐらい、あの戦いは血沸き肉躍るものだった。
「はぁ、駄目だな……」
こんな状態では、とてもじゃないが眠れない。
チラリと時計に目を向ければ、時刻はちょうど深夜零時を回った頃だ。
「……軽く素振りでもしようかな」
軽く二三十分ほど剣を振れば、高ぶった気持ちも落ち着いてくれるだろう。
明日も早いけど、このままベッドに寝転んでいても寝付けそうにない。
それならばいっそのこと、身も心もリフレッシュするために素振りをすべきではないだろうか?
「――よし、行くか!」
俺はカッと目を見開き、ベッドから跳び上がる。
「着替えは……まぁ、このままでいいか」
いつもみたく四時間も五時間も剣を振るわけじゃない。
わざわざ制服に着替え直す必要もないだろう。
「……みんなもう寝てるだろうから、静かに移動しないとな」
壁に立て掛けた剣を握り締め、ゆっくりと部屋を出る。
長い廊下を真っ直ぐ進み、大きな足音を立てないよう忍び足で階段を降りていった。
すると、
(……あれ?)
二階の北端にある突き出しのテラス、そこに浴衣姿のローズを見つけた。
(こんな時間に何をしているんだろう?)
月明かりに照らされた彼女は、どこかもの悲しそうな表情で億年桜を眺めていた。




