桜の国チェリンと七聖剣【六十六】
アークストリア家の別荘に着いた後は、みんなで一緒においしい晩ごはんに舌鼓を打ったり、一つの部屋に集まってトランプやボードゲームで遊んだり、二階のテラスで涼みながらお喋りをしたり――とても穏やかで楽しい時間を過ごした。
ふと時計を見れば、時刻は既に夜の十一時三十分。
明日もバッカスさんから桜華一刀流を習うことを考えれば、そろそろ体を休める必要があるだろう。
「あら、もうこんな時間……。そろそろお開きにしないといけないわね……っ」
俺と同じタイミングで時計を見た会長は、
「なっ!? もう十一時を回っている、だと……!?」
「ま、まだまだ全然話し足りないんですけど!?」
リリム先輩とフェリス先輩は、驚愕に目を見開く。
どうやら三人とも、お喋りにのめり込んでいたようだ。
「あはは。楽しい時間は、本当に速いですね」
「そうね。つまらないことをしているときは、とーっても長く感じるのに……」
「あぁ、全くだな」
リアとローズはそう言って、小さく肩を竦めた。
「ちょっと名残おしいけど……。今日はここまでにして、続きはまた明日にしましょう。――それじゃ、みんなの客室へ案内するわ。一つ階段を上がった三階よ。付いて来てちょうだい」
それから俺たちは会長に連れられ、一人一人とても豪華な部屋をあてがわれた。
「こ、これはまた凄いですね……っ」
壁に掛けられた、見るからに高そうな絵画。
豪華な調度品の数々。
いかにも高そうなソファ・装飾の凝ったキングサイズのベッド・重厚感のある木目の美しい箪笥。
俺なんかには、もったいないほどの部屋だ。
「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ。――それじゃアレンくん、おやすみなさい」
「あっはい。おやすみなさい、会長」
俺たちは小さく手を振り合い、部屋の前で別れた。
その後は素早く寝支度を整え、部屋の最奥に設置されたベッドに腰掛ける。
「おぉ、これはいいな……!」
柔らかく、ほどよい反発のあるベッド。
思わず、時の世界にあったものを思い出してしまうほどだ。
「ふわぁ……。うん、そろそろ寝るか……」
間接照明に切り替え、ゆっくり目を閉じた。
それからおよそ十分後、
「……寝れない」
横になったり、仰向けになったり、うつ伏せになったり――いろいろな寝方を試してみたが、全くと言っていいほど寝付けなかった。
どうにもこうにも、気が高ぶって落ち着かない。
今だってそう。
(あぁ、あれは本当に凄かったなぁ……)
瞼を落とせば、あのときの記憶が鮮明に甦ってしまうのだ。
※とても大事なお知らせ
一億年ボタン『第2巻』の発売がわずか一か月後の『12月20日』に決定!
第1巻に引き続き、今回も新規書き下ろしエピソードと大量加筆を収録いたします!
『緊急大重版』の決定した書籍版第1巻、どうかぜひお手に取っていただけると嬉しいです!
書籍版は、一億年ボタンを押した後の『時の世界』での出来事やアレンが持つ時の仙人への感情がかなり改良されておりまして……。物語の深みと面白さが、跳ねあがっております! 実際に書籍版を購入いただいた方からは、絶賛の声をいただいております!
さらに書籍版には『新規書き下ろしエピソード』・『大量の加筆修正』・『大量のカラー&モノクロイラスト』が収録されており、とにかくとんでもない情報量が詰め込まれております!
この中で、
「そう言えば、まだ買ってなかったな……」
「ちょっと気になってるんだよな」
「本屋で並んでるの見たかも……」
という方はぜひ、手に取っていただけると嬉しいです!
小説家になろうだけでなく、商業の世界でも大好評の『一億年ボタン』!
今後ともどうか応援していただけるよう、お願い致します……!




