表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

279/445

桜の国チェリンと七聖剣【五十】


 セバスさんとバッカスさんの犯罪行為(のぞき)を防ぐため、俺が第三勢力として立ち上がれば、


「へぇ、アレンがのぞきに加わるなんて少し意外だな……。狙いはやっぱりリア=ヴェステリアかい?」


「ほぅ、小僧はあの金髪美女を好いておるのか! しかし、純粋無垢(むく)な顔をしておるが……小僧もやはり『男』よのぅ!」


 二人から好奇の視線が向けられた。


「勘違いしないでください。女子風呂をのぞく気なんか、これっぽっちもありません。俺はただ――リアの裸を他の男に見られたくないだけです」


「ふっ、なるほどそういうことか……。実に君らしい真っ直ぐな選択だ」


「ばらららら! 随分と惚れ込んでおるようじゃのぅ!」


 それから俺とバッカスさんは湯船から上がり、セバスさんは木の塀から飛び降りる。


「僕たちが全力でやり合えば、この辺りは更地になってしまう。そうなるともはや『のぞく・のぞかない』の問題に収まらない。――だから、今日はこいつ(・・・)でやらないか?」


 セバスさんは掃除用具箱から三本のモップを取り出し、それぞれ一本ずつこちらへ放り投げた。


「戦闘範囲は男子風呂のみ。魂装の使用は禁止。このモップが折れた時点で即敗北。ルールはこんなところでどうだろうか?」


「はい、俺はそれで構いません」


「儂も異存はない。剣だろうがモップだろうが木の枝だろうが、貴様等のような青二才には負けん!」


 ルールが決まったところで、俺たちはそれぞれ構えを取った。


 腰に白いタオルを巻いただけの男が三人、モップを片手に睨み合う。


(はた)から見れば、少し異様な光景かもしれないが……)


 これは紛れもない真剣勝負だ。

 一瞬でも気を抜けば、即敗北に繋がってしまう。


 それから十秒二十秒と睨み合いが続き、桜のはなびらが三人の中心点に降り落ちたその瞬間――俺たちは同時に動き出した。


「八の太刀――八咫烏(やたがらす)ッ!」


「桜華一刀流――夜桜(よざくら)ッ!」


絶剣(ぜっけん)――紫突(しとつ)ッ!」


 八連撃・袈裟斬り・刺突、三つの斬撃が激しくぶつかり合った。


『カコォン』という間の抜けた衝突音が響き、とてつもない衝撃が走る。


「くっ!?」


 モップから腕へ、腕から足へ、足から地面へ。

 俺はその衝撃を下へ下へと逃し、なんとかモップの破損を防いだ。


「さすがは『人外』に『不死身』……。魂装を抜きにした単純な腕力じゃ、ちょっと分が悪そうだね……っ」


 セバスさんは苦しそうな表情を浮かべ、必死に衝撃を大地へ流していた。


 そんな中、


「ばらららら! 今の一撃で叩き折るつもりじゃったが、中々どうしてやるではないか!」


 バッカスさんは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった表情で、傷一つないモップを振ってみせた。


(やっぱり巧い(・・)……!)


 彼は八咫烏と紫突を完璧に見切り、その力をいなすようにして『斜め方向の夜桜』を放ったのだ。


 初撃の結果は、バッカスさんの一人勝ちと言えるだろう。


(桜華一刀流、十六代目正統継承者バッカス=バレンシア……)


 やはり純粋な剣術の腕は、この中でもピカイチのようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ