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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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桜の国チェリンと七聖剣【二十七】


 バッカスさんは「儂の家へ案内しよう!」と言って、海岸沿いをズンズンと歩いていったのだが……。


(……あれ。確かここは、完全な『孤島』だったよな……?)


 つい先ほど、飛空機(ひくうき)で一周してきたばかりだから間違いない。

 この島は周囲を海に囲われた、とても小さな無人島だ。


(空から見た限り、民家らしきものはどこにもなかったんだけど……。彼の家は、いったいどこにあるんだろうか?)


 そんな疑問を抱いた俺は、率直に聞いてみることにした。


「バッカスさん、ご自宅はこの近くにあるんですか?」


「あぁ、すぐそこじゃ。儂の家は『本土(ほんど)』の南部に建てられた、木造の平屋――ちぃとばかし古いが、見晴らしは最高だぞ? なにせ真正面には、満開の億年桜が年中咲き誇っておるからのぅ! ここ桜の国チェリンで、これ以上の立地はあるまい!」


 彼はそう言って、自慢気に胸を張った。

 どうやらバッカスさんの家は、チェリンの本土にあるらしい。


「なるほど……。ですが、そうなると……どうやってこの島へ来たんですか?」


「ん? これはまた()なことを聞くのぅ。それはもちろん――徒歩じゃ。儂はここまで歩いてきた。この島には魚の集まる『穴場』があってな。趣味と実益を兼ねて、よく釣りに来ているんじゃよ」


 彼はそう言って、シュッと釣り竿を振る素振りを見せた。


「徒歩で……? ここは周囲を海で囲われた孤島、と聞いていたんですが……」


 もしかしてチェリンに住む人だけが知っている、『秘密の道』のようなものがあるんだろうか?


(……いや。でもさっき空から見た限り、そんなものはなかった)


 それにかつてこの国に住んでいたローズが、『ここは孤島だ』とはっきり言っている。


(これは、どういうことだ……?)


 そうして俺が小首を傾げていると、バッカスさんは楽しげに笑った。


「ばらららら、この島が孤島じゃと? いったい何を言っておるのか……。ほれあそこを見るがいい!」


 彼が前方を指差せば――そこにはなんと、木製の橋が()かっていた。

 それはまるで大樹の根のような、黒々とした巨大な橋だ。


「あ、あれ……? そんなはずは……っ」


 俺が自分の目を疑っていると、


「――どうした、小僧? 狐につままれたような顔をしておるぞ?」


 バッカスさんは(ほり)の深い顔をぐにゃりと歪め、心配そうに問い掛けてきた。


(あぁ、なるほどな……)


 そのしたり顔を見て、すぐにピンときた。


「魂装の力、ですね?」


「ばらららら、左様! 中々どうして察しがいいではないか!」


 彼はそう言って、バシンと俺の背を叩いた。


 どうやらこの巨大な橋は、バッカスさんの能力で架けられたものらしい。


(この橋は巨大な黒い大木だ。ということは『木を操る能力』、か……? いや、この周辺にこんな巨大な木は生えていない……。となれば、『新たに木を作り出す能力』か……?)


 そんな風に未知の能力について思考を巡らせていると、


「はて、そう言えば……。お前さんらこそ、いったいどうやってこの島へ来たのだ? ここは儂以外(・・・)の人間が、そう容易く立ち入れる場所ではないのじゃが……」


 バッカスさんは、先ほどの俺と同じような質問を口にした。


「俺たちは『飛空機』という超小型の飛行機に乗って、空から来たんですよ」


「ひ、『ヒクウキ』……? なるほど、(ちまた)で噂の『カラクリ』とかいうやつか……」


 彼は難しい表情で「ぐぬぬ」と(うな)る。

 どうやら機械関連については、あまり明るくないようだ。


「そうじゃのぅ……。それなら儂は一足先に帰って、もてなす準備をしておこう。お前さんらはそのヒクウキとやらを回収してから、ゆっくりと来るがいい。――ローズ、道案内は頼めるな?」


「えぇ、わかりました」


 ローズはコクリと頷き、バッカスさんの頼みを快諾した。


「よし、それではまた会おうぞ!」


 彼はそう言って、自身の能力で架けた橋を渡っていく。


 それから俺たちは、飛空機を回収するために動き始めたのだった。


『一億年ボタン』第1巻の発売まで、後6日!


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