表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

247/445

桜の国チェリンと七聖剣【十八】


 紙コップを手にした会長は「隣、いいかしら?」と言って、可愛らしく小首を傾げた。


「えぇ、どうぞ」


 俺はコクリと頷き、レジャーシートに散らばったはなびらを軽く手で払う。


「ふふっ、ありがと」


 彼女は嬉しそうに微笑み、ゆっくりとそこへ腰を下ろした。


「んー……っ。お日様が本当に気持ちいいわ。今日は絶好のお花見日和ね」


「天気予報によれば、これから一週間はずっと晴れるみたいですよ? 本当にとてもいいタイミングで来れました」


「それもこれも、きっとお姉さんの日ごろの行いがよかったからでしょうねぇ……」


 会長はそう言って、「うんうん」と頷いた。


「あはは、そうかもしれませんね」


「むっ、今冗談だと思ったでしょ!」


「さて、それはどうでしょうか?」


 そんな風に冗談を交わした後――俺たちはどちらからともなく、億年桜を見上げた。


「それにしても本当に綺麗ねぇ……」


「えぇ、そうですね……」


 その後、


「……」


「……」


 (いく)ばくかの時が流れ、二人の間に沈黙が訪れた。


 しかし、それは息苦しさや居づらさを感じさせるものではない。

 同じ桜を見上げ、同じ感動を抱き、同じ時を共有する。

 そんなとても幸せな沈黙だった。


 それから俺と会長は揃って温かいお茶に口を付け、


「「ふぅ……」」


 二人同時にホッと息を吐き出した。


「ふふっ、真似しないでくれるかしら?」


「あはは、会長の方こそ」


 なんとも言えないおかしさを感じ、俺たちはクスクスと笑い合う。


「……でも、本当にここは平和ね」


 彼女は周囲の花見客を見やりながら、そんな感想をこぼした。


「そうですね。ただ『嵐の前の静けさ』じゃなければ、いいんですけど……」


「もう、そんな怖いことは言わないでくれるかしら?」


 会長はそう言って、俺の脇腹を肘でぐりぐりと(つつ)く。


「っと、すみません」


 俺は苦笑を浮かべ、手元の紙コップに口をつけた。


(でも実際これから、どうなって(・・・・・)いくんだ(・・・・)ろうな(・・・)……)


 近年の国際情勢は、かつてないほどに不安定だ。

 新聞・ラジオなどでは連日のように黒の組織のニュースが流れており、実際俺は何度も奴等と斬り合ってきた。


(それに何より、この平穏な時間の裏では世界規模の会議が開かれている)


 会長の話によれば、天子様やロディスさんなどの各国首脳陣や人類最強の七剣士――『七聖剣(しちせいけん)』が四人も出席するらしい。

 そしてその議題は、『神聖ローネリア帝国への対応』という話だ。


(帝国と即時開戦するのか、しばらく様子を見るのか、それともまた別の方策を打ち立てるのか……)


 なんにせよ。

 今やもう、いつ五大国と神聖ローネリア帝国の『全面戦争』が始まるかわからない状況だ。


(……もっと強くならないとな)


 謎に包まれた神聖ローネリア帝国の皇帝バレル=ローネリア。

 セバスさんをはじめとした皇帝直属の四騎士。

呪法(じゅほう)』という恐ろしい力を操り、帝国と手を結んだ魔族。


 これから戦っていく敵は、今までよりも遥かに強い。


(リアやみんなを守るためには『力』が必要だ……)


 そのためには、やはり素振りを続けるしかないだろう。


 俺が一人そんなことを考えていると、


「――アレンくん、温かいお茶はいかがかしら?」


 保温瓶を手にした会長が気を利かせてくれた。


「ぜひ、いただきます」


 彼女にお茶を()んでもらった俺は、温かいうちにゴクリと口へ含んだ。 


「あぁ……っ」


 そうして白い息を吐き出すと、


「ふふっ」


 こちらを横目で見ていた会長が、何故かクスリと笑った。


「えーっと、どうかしましたか?」


「いえ、ごめんなさい。アレンくんの仕草が、なんだか爺ちゃんみたいだなぁって、思っちゃったのよ」


「あぁ、なるほど。……でも、もしかすると本当にお爺ちゃんかもしれませんよ?」


 実年齢こそ十五歳だが、精神年齢は十数億と十五歳。

 お爺ちゃんどころか、もはや『仙人』の領域に足を踏み入れている。


「もう、お姉さんより年下なのに何を言っているのかしら?」


「あはは、ちょっとした冗談ですよ」


 こうしてしばらく会長と談笑した後は、リアやローズたちも交えてみんなで花見を楽しんだ。


(あぁ、こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいのになぁ……)


 俺はそんな感慨(かんがい)にふけりながら、ゆっくりと温かいお茶をすするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >実年齢こそ十五歳だが、精神年齢は十数億と十五歳。 物語の最初の一文が アレン=ロードル。十五歳。 なのでそこから1年は経過しているはずで十六歳なのでは? それと精神年齢はボタンの十…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ