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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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桜の国チェリンと七聖剣【十四】


 リアに指輪をプレゼントした俺は、彼女を連れて桜商店の前へ戻った。


 するとそこにはローズ・フェリス先輩・リリム先輩が集まっており、たった今ちょうど会長が店から出たところだった。


「――ごめんなさい。ちょっと待たせちゃったかしら?」


 彼女は小走りで駆け寄りながらそう言うと、リリム先輩とフェリス先輩は首を横へ振った。


「いや、私たちもついさっき買い終わったところだ」


「ばっちりのタイミングだったんですけど」


「ふふっ、ならよかった。それじゃ早速――見せ合いっこしましょうか!」


 それから桜物のお披露目(ひろめ)(かい)が始まった。


 ローズは、優美な桜のはなびらが描かれた扇子(せんす)

 会長は、桜色のリボンが巻かれた可愛らしい麦わら帽子。

 リリム先輩は、フレームに桜吹雪の舞った黒いサングラス。

 フェリス先輩は、桜の大樹がモチーフになった小物入れ。


 みんなそれぞれセンスが抜群で、とてもよく似合っていた。


 そうしていよいよ、俺の番が回ってきた。


「アレンは、桜色の腕時計ね。――うん、とってもかっこいいと思うわ!」


「そうだな、特にベルトの色合いが絶妙だ」


 リアとローズはそう言って、手放しに褒めてくれた。


「あら、いいじゃない。よく似合っているわ!」


「確かに……派手過ぎないところが、アレンくんらしいな!」


「さりげなくお洒落な感じなんですけど……!」


 会長たちも嬉しいことを言ってくれた。


「あはは、ありがとうございます」


 値段こそ二千ゴルドと控えめながら、みんなからの評判はかなりよかった。


(俺の予想通り、やっぱりこの腕時計は中々の掘り出し物だったな)


 その後、みんなの視線は最後の一人――リアの元へ向けられた。


「リアの桜物は指輪か。……これは美しいな」


 ローズは感嘆(かんたん)の息を漏らし、


「素敵な指輪ね。淡い桜色がとっても綺麗だわ!」


「これはいいな! まるでどこかのお姫様みたい……って、ヴェステリアのお姫様だったか!」


「とてもよく似合っているんですけど!」


 会長たちからも絶賛の声があがった。


 そうしてみんなからたくさん褒められたリアは、


「え、えへへ……。ありがとうございます……っ」


 喜びの感情を隠し切れず、女の子らしいとても可愛い笑みを浮かべた。


 どこかうっとりとしたその表情を見たローズと会長は、何故か二人して息を呑んだ。


「り、リア……。もしかして、その指輪は……?」


「ま、まさかとは思うけれど……。アレンくんからのプレゼント、なのかしら……?」


 そう問われた彼女は、


「う、うん……っ」


 頬を朱に染めながら、嬉しそうにコクリと頷いた。


 すると次の瞬間、


「「……っ!?」」


 ローズと会長は大きくのけぞり、


「「お、おぉ……っ!?」」


 リリム先輩とフェリス先輩は、鼻息を荒くして身を乗り出した。


(な、なんだ……?)


 緊張・興味・不安――様々な感情の入り混じった、なんとも言えない難しい空気が流れ出した。


(こ、これは……いったいどうしたんだ……?)


 突如発生した不思議な空気に困惑していると、


「あ、アレン……。こんな風に自分からねだるのは、おかしな話かもしれないが……。私も、その……欲しいぞ……。お前からのプレゼントが……っ」


「お、お姉さんも欲しいかなぁ……なんて……っ」


 ローズと会長は顔を赤くしながら、そんな要望を口にした。


「え、えーっと……」


 ローズには、これまでいろいろと助けてくれた。

 リアが黒の組織に囚われたときも、会長を奪還するために神聖ローネリア帝国へ向かったときも、いつだってその力を貸してくれた。


 会長には夏合宿でヴェネリア島・春合宿で桜の国チェリンへ連れて来てもらっているし、それになんだかんだ言って千刃学院でもお世話になっている。


 そんな二人へプレゼントを贈るのは、全く構わない――いや、むしろ積極的に渡したいぐらいなんだが……。


「す、すみません……。今はちょっと手持ちが寂しいので、また別の機会でいいでしょうか?」


 悲しいかな。

 俺の手持ちは、もはや三千ゴルドしかない。

 ここからさらに二つのプレゼントを買うことは、とても現実的じゃない。


 そうして「今は難しい」ということをやんわり伝えれば、


「べ、『別の機会』ならばもらえるのか……!?」


「ほ、本当にいいの!?」


 ローズと会長は、前掛かりになってそう確認してきた。


(す、凄い食い付きだな……っ)


 ポーラさんの言っていた通り、女の子は本当にプレゼントが大好きみたいだ。


「はい、もちろんですよ」


「そ、そうか……!」


「や、やった……!」


『プレゼントの確約』を得た二人は、とても嬉しそうに微笑んだ。


(しかし、困ったな……)


 正直、寮に戻ってもお金はほとんどない。


(帰ったら、バイトでも始めようかな……?)


 ……いや。


(前みたいにどこかの剣武祭に出場して、賞金を狙うというのもありだな……)


 ぼんやりそんなことを考えていると、とても上機嫌な会長はパンと手を打った。


「――さて、みんな桜物を手に入れたことだし、そろそろ出発しましょうか!」


 そうして俺たちは、いよいよ本格的に桜の国チェリンを観光することになったのだった。


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