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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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桜の国チェリンと七聖剣【六】


 飛行機が無事に離陸を果たし、巡航高度(じゅんこうこうど)に到達したところで俺たちはシートベルトを外した。


 それと同時に、


「すまない、少し眠らせてもらうぞ……」


「……おやすみなんですけど」


 睡魔にやられたローズとフェリス先輩はそう言って、機内の最奥に設置された仮眠室へ向かった。


 その後、残った四人でちょっとした雑談に花を咲かせ、それもひと段落がついたあるとき。


「――ねぇ、みんな。もしよかったら、これ(・・)で遊ばない?」


 会長は長方形の箱を持ち出し、中央に備え付けられた大きな机の上に載せた。


「なんですか、それ……?」


 それとなく俺が問い掛けると、


「どぅるるるるるるるるるるるる……じゃじゃーん、『人生ゲーム』よ!」


 彼女は可愛らしいドラムロールを口ずさみながら、勢いよく箱を開け放った。


 すると次の瞬間、


「あっ、これ! 私、小さい頃にやったことがありますよ! うわぁ、懐かしいなぁ……っ」


 リアは小さな子どものように目をキラキラ輝かせながら、箱の中に仕舞われたボードゲームに食い付く。


「おぉ、ずいぶん久しぶりに見たな! 中等部の頃、みんなで遊んだとき以来じゃないか!?」


 リリム先輩もかなり興奮しているようで、リアと肩を並べてボードに書かれたマスを凝視(ぎょうし)した。


「ふふっ、昨日いろいろと準備をしているときに偶然見つけてね。みんなで遊んだら楽しいだろうなって思って、念のために運び込んでおいたのよ」


「さすがはシィ、ナイス判断だ!」


「でしょでしょ!」


 そうしてこの場の空気が一気に温まったところで、


「――ねぇねぇ、アレン。一緒に遊びましょう!」


 とても楽しそうな笑みを浮かべたリアが、ぐぐっと顔を寄せてきた。


「あぁ、もちろんいいぞ」


 彼女がこんなに嬉しそうなんだ。

 当然、断る理由はどこにもない。


 そうして全員の意見が一致したところで、会長はパンと手を打ち鳴らした。


「よし、それじゃ決定ね! 後はルールについてなんだけど……。私とリリムは中等部の頃にやっていたし、リアさんも知っているようだから大丈夫そうね?」


 彼女がそう確認を取れば、二人はすぐにコクリと頷いた。


「アレンくんは、どうかしら?」


「そうですね……。人生ゲームはゴザ村でやったことがあるんですが、これは俺の知っているものとかなり違っているようです……」


 俺が竹爺たちと一緒に遊んだのは、もっと黒くて茶色くて……とにかく『ダーク』な感じのパッケージだった。

 決してこんなに明るくて、楽しげなものではない。


「あら、そうなの? 人生ゲームと言えば、このシリーズが定番なんだけど……まぁ、いいわ。それじゃ念のため、簡単にルールを説明しておこうかしら」


「はい、お願いします」


 それから会長は、わかりやすくルールを説明してくれた。


 各プレイヤーは、一から十までの数字が割り振られたルーレットを順番に回していく。

 そうして出た目の数だけマスを進んで行き、ボードの中央にある『ゴール』を目指す。

 途中停止したマスに書かれた様々なイベントを実行し、ゴールに到着した時点で最も『保有資産の現金評価額』の多いプレイヤーが勝利となる。


 ルール自体に特段珍しいものはなく、ゴザ村で遊んでいた人生ゲームと全く同じだった。


「ちなみに一つだけ忠告しておくと……。残念ながら、アレンくんとリアさんに勝ち目はないわよ? なんと言っても私とリリムは、このゲームを極めているもの!」


「ふっふっふっ! ありとあらゆるところから勝ち筋を拾い、全ての負け筋を潰す……! 勝負は既に始まる前から、決まっているのだ!」


「あら、舐めてもらったら困りますよ? 私もお父さんやクロードを相手に何百戦と戦い、今でも全マスのイベントを丸暗記していますから!」


 三人はそう言って、激しい火花を散らした。


 どうやら彼女たちはこの人生ゲームに並々ならぬ自信があるらしく、なんだか俺一人置いてけぼりにされている感じだ。


「あ、あはは……。とりあえず、お手柔らかにお願いしますね?」


 こうして俺たちは桜の国チェリンへ到着するまでの間、人生ゲームで遊ぶことになったのだった。


 それからおよそ三時間後、


「そ、そんな……。あり得ないわ……っ」


「う、嘘でしょ……!?」


「ぐ、ぐぬぬぬ……っ」


 会長・リア・リリム先輩の三人は、顔を青くしながら手元のゲーム内通貨をギュッと握り締めた。


「えーっと、三億、四億、五億と八千万ゴルド……。どうやら今回()、俺の勝ちみたいですね?」


 二位は会長の約一億一千万ゴルド。

 三位はリアの七千万ゴルド。

 最下位はリリム先輩のマイナス六千万ゴルド。


 二位の会長に五倍以上の大差を付けた『完全勝利』だった。


 しかも――ここまで三戦三勝。

 たったの一度として、一位の座を譲ったことはない。


 すると、


「い、イカサマよ、イカサマ……! こんなの絶対におかしいわ!」


「アレン、正直に言いなさい。あなた、なにか悪いことしているんじゃないの……?」


「アレンくん……。この人生ゲームを初めて遊んだ割には、少し強過ぎるんじゃないか……? もしかして、また(・・)何かやっているんじゃ……?」


 予想通りというかなんというか……。

 会長とリアとリリム先輩は、口を揃えてそんなクレームを付けてきたのだった。

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