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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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桜の国チェリンと七聖剣【一】


 とても充実したバレンタインデーの翌日、今日は大事な『生徒会役員選挙』が実施される日だ。


 現在の時刻は、十五時二十五分。

 午前午後と授業を受けた後――俺を含む生徒会の全メンバーは、体育館の舞台上に並んでいた。


 眼下には全校生徒五百四十人あまりの姿があり、彼らの視線は容赦なく全身を射抜いてくる。


(や、やっぱり緊張するな……っ)


 俺は気持ちを落ち着かせるため、大きく息を吐き出す。


 それとなく両隣へ目を向ければ――凛とした空気を放つリアとローズが美しい姿勢で真っ直ぐ立っていた。

 そこには余裕や気品のようなものが漂っており、なんというか『大人の女性』に見えた。


(そう言えば、前にもこんなことがあったっけか……)


 あれはそう、確か入学式のときだ。

 いわゆる『推薦組』の俺とリアとローズは、全校生徒が見守るこの場で簡単な自己紹介をすることになった。


 ヴェステリアの王女と桜華一刀流の賞金稼ぎ。

 世界的に有名な二人からバトンを渡された『我流の剣士』は――()てつくような視線に(さら)され、心の中で大粒の涙を流した。


(あのときは、本当にきつかったなぁ……)


 グラン剣術学院でひどいいじめを受けた俺は、ごくありふれた『普通』を望んでいた。

 よく学んで、よく修業して、人並に友達を作って、たまにはクラスのみんなと遊んで――そんなどこにでもある普通の学生生活が送りたかったのだ。


(それなのに、入学初日から全校生徒の好感度がマイナスになるなんてな……)


 今でこそ楽しい毎日を送っていられるけど……。

 あのときばかりは、本当にもう駄目かと思った。


 俺がそんな昔のことを思い出していると、舞台の中央に立つレイア先生がゴホンと咳払いをした。


「――よし。それではこれより、生徒会役員選挙を実施するぞ!」


 彼女が高らかにそう宣言すれば、体育館から大きな拍手が巻き起こる。


「担任の先生方から連絡があったと思うが、念のために私からも重ねて伝えておこう。今回は新たな立候補者がいなかったため、通常の役員選挙は実施されない。その代わり、前年度生徒会役員たちの信任・不信任を問う『信任投票』を()り行う! ――諸君、ホームルームで配布された『投票用紙』を準備してくれ!」


 全生徒が同時に動き始め、懐から白い投票用紙を取り出した。


「それでは早速、一年A組から順に舞台正面に設置した投票箱に『清き一票』を投じてくれ!」


 一年A組から三年F組までの全生徒が、規律を守って順番に投票していく。


 その後、十名からなる選挙管理委員が投票箱を開封し、ものの十分もしないうちに集計が終わった。


 その結果、生徒会長シィ=アークストリア、書記リリム=ツオリーネ、会計フェリス=マグダロート。

 先輩たち全員の続投が決定した。


 ちなみに『庶務』という役職は、その代の『生徒会長』が自由に指名できるため、信任投票の対象にならない。

 つまり、俺とリアとローズは元々庶務職を続投することが決まっているのだ。


(ふぅ、何はともあれ一安心だな……)


 セバスさんという例外はあるものの……。

 この一年、ずっと同じメンバーでやってきたんだ。

 会長もリリム先輩もフェリス先輩も、誰一人として欠けてほしくはない。


 そうして無事に信任投票が終わるかと思われたそのとき――突然、会長が先生の元へ歩き出した。


 二人は小さな声で何かを話し合い、同時に爽やかな笑みを浮かべる。


 その瞬間、


(……っ!?)


 なんともいえない、嫌な予感が背筋を走った。


(な、なんだ……っ。今のゾッとする感覚は……!?)


 その悪寒の正体は、わずか数秒後に判明した。


 先生との密談を終えた会長は、全校生徒へ向けて信じられないことを口にしたのだ。


「――こんにちは、生徒会長シィ=アークストリアです。一つみなさまにご提案したいことがあり、この場をお借りしました。あまり時間もありませんので、単刀直入に申し上げます。私は――現在空席となっている『副会長』に、現生徒会庶務アレン=ロードルを推薦いたします」


 その瞬間、体育館全体が一斉にざわつき始めた。


(さ、最近少し大人しくなったと思ったら……。この人は……っ)


 俺は固く拳を握り締めつつ、大きなため息をついたのだった。


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