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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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入学試験とバレンタインデー【二十】


 リリム先輩とフェリス先輩から本命チョコを受け取った俺は、まるで何事もなかったかのように自分の席へ移動した。


 すると次の瞬間、


「「――ちょ、ちょっと待て!」」


 二人は同時にそう叫び、俺の肩をがっしりと掴んだ。


「はい、なんでしょうか?」


「純情な乙女二人が、勇気を振り絞って本命チョコを渡しているんだぞ!? なんかもっと、もっとこう……あるだろう!?」


「こ、心まで化物になってしまったの!? あまりにも反応がしょっぱ過ぎるんですけど!」


『見込み』の外れたリリム先輩とフェリス先輩は、物凄い勢いで食い付いてきた。


「そう言われましても……。そもそもこれは、義理ですよね?」


「わ、私たちの『本命』を『偽物』呼ばわりするとは……っ。と、当然、確たる『証拠』があるんだろうな!?」


「り、リリムの言う通りなんですけど……!」


 二人は声を震わせながら、抗議の声をあげた。


「証拠ならここに――」


 俺はそう呟きながら、セバスさんの机に足を向ける。

 そうしてそこに置かれた白い小箱を開ければ、


「――ありますよ?」


 思った通り、超小型の隠しカメラが仕込まれていた。


「ば、馬鹿な……!?」


「ど、どうして、そこにあるのがわかったの? 詳しく説明して欲しいんですけど……っ」


「別に説明するほどのことじゃありません。ただ『隠しカメラ』については、少し詳しいだけですよ」


 ポーカーやブラックジャックなどの『カードゲーム』において、手札を見られることは即敗北を意味する。

 そのため俺は、隠しカメラの設置されやすい場所やその見分け方などなど、竹爺からたくさん教えてもらっているのだ。


「ぐっ、さすがはアレンくん……。相変わらず、鉄壁の防御力だな……っ」


「せっかく取り寄せた隠しカメラが水の泡に……っ」


 そうして白旗をあげた二人は、静かにその場で崩れ落ちた。


(おそらく本命チョコをもらった俺の反応を録画して、楽しむつもりだったんだろうけど……)


 残念ながら、そんな安い手に引っ掛かったりはしない。


(でも、今回のはちょっと悪質だな……)


 二人の『悪戯(いたずら)』がこれ以上ヒートアップしないよう、少しだけ釘を刺しておいた方がいいだろう。


 そう判断した俺は、一つ咳払いをして注目を集める。


「――でも、『いいもの』が撮れましたね」


「「……いいもの?」」


「はい。リリム先輩とフェリス先輩が、顔を真っ赤にして告白する録画映像。これにはとても『価値』があると思うんですよ」


「「……っ!?」」


 その瞬間、二人の表情は真っ青になった。


 リリム先輩は、短めの茶髪が特徴的な明るく健康的な美少女。

 フェリス先輩は、暗めの青い髪で右目が隠れた、ダウナー系の美少女。

 系統は異なるが、『美人』であることに疑いの余地はない。


 そんな二人が顔を真っ赤にしながら、本命チョコを渡すという希少な映像。

 その需要たるや凄まじいものがあるだろう。


「あ、アレンくん……? そんな邪悪な顔をして、いったい何を考えているんだい……?」


「で、できれば教えてほしかったりするんですけど……?」


 リリム先輩とフェリス先輩は、恐る恐るといった風にそう問い掛けてきた。


「そうですね。せっかく撮れたこの映像――欲しがっている人に高値で売り付けるか、それとも体育館や視聴覚室で無償公開するか……。どのように有効活用すればいいのか、考え込んでいるところです」


 わざと思い悩んでいるような表情と口振りで、二つの可能性を提示した。


 もちろん、そんなひどいことをする気はさらさらない。

 これは少しやり過ぎた彼女たちに、反省を促すためのちょっとした意地悪だ。


 すると、


「なっ、なんて残酷なことを考えるんだ……っ。それでも君は人間か!」


「お、鬼・悪魔・アレン!」


 リリム先輩とフェリス先輩は顔を真っ青にしながら、こちらに指を突き付けてそう糾弾した。


(いや、最後の『アレン』は悪口じゃないだろ……)


 俺は心の中でそうツッコミを入れながら、真剣な表情で返答をする。


「こんな風に隠し撮りした映像は、いくらでも悪用することができます。そのことは、わかっていただけましたか?」


「う゛……そ、それは……っ。……すまなかった。今回は少し悪ふざけが過ぎたみたいだ……」


「ちゃ、ちゃんと反省したから、どうかお慈悲を……っ」


 リリム先輩とフェリス先輩は、しょんぼり肩を落としながら謝罪の弁を口にした。


「はぁ……。次はないですからね?」


 俺がそう言って、隠しカメラを返してあげると、


「あ、アレンくん、君という男は……!」


「か、感謝なんですけど……!」


 二人はホッと胸を撫で下ろし、感謝の言葉を口にした。


 そうして先輩方の悪戯を軽くいなした後、ようやく定例会議こと『お昼ご飯の会』が始まる。


 しかし――いつもは楽しいはずのその時間が、今日に限っては重苦しい空気に包まれていた。


 まず第一に、ムードメーカーのリアが黙り込んでいるのだ。


(どうしたんだろう……。今朝一緒に登校したときは、いつも通りだったのに……)


 朝のホームルームぐらいから、彼女は突然元気をなくしてしまった。


 それに会長の様子も相変わらずおかしい。

 チラチラとこちらを見つめては、目が合った瞬間に視線を逸らすというとてつもなく奇妙な行動を今日も今日とて続けていた。


 その一方でローズは特に気にした素振りもなく、普段通りに昼食を食べている。

 またリリム先輩とフェリス先輩は、このなんとも言えない微妙な空気を楽しんでいるようだった。


 そんな中、少しでも空気がよくなるようにとみんなへ会話を振ってみたが……。

 残念ながら、俺の(つたな)い話術では状況を打開することはできなかった。


 そうしてなんとか定例会議を乗り切った後は、続く午後の授業を無難にこなした。


 それからようやく迎えた放課後――俺はいつものように素振り部の活動に精を出す。


「ふっ、はっ、せいっ!」


 いつものように気持ちよく剣を振っていると、


(……なんだ?)


 正門のあたりで、トラブルが発生しているのが目に入った。


(……少し行ってみるか)


 最近はなにかと物騒だ。

 もしかしたら、また黒の組織が攻め込んできたのかもしれない。


 そうして俺が正門に顔を出すとそこには――完全に予想外の人物がいた。


「え……?」


「あ、アレンだ」


 なんと警備員と揉めていたのは、


「い、イドラ……?」


「うん、久しぶり」


 白百合女学院の真っ白な制服に身を包んだ、イドラ=ルクスマリアだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] つい一週間前に読み始めたばかりなのに面白すぎてもおここまで来てしまいました!w 本当に毎日元気をもらっています! これからも一読者として陰ながら応援していきますので、 先生も体調を崩さないよ…
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