表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/445

入学試験とバレンタインデー【十一】


 不安、恐怖、焦燥(しょうそう)――受験生たちは、負の感情がない混ぜになった目をしていた。


(ま、マズいぞ……。すぐに事情を説明しないと……っ)


 先ほどのトラブルを(はた)から見た場合、『アレン=ロードル』という人間はとんでもなく情緒不安定な男に映ってしまう。


 ルーの手を治療したかと思えば、次の瞬間には彼女の首を絞め出した。

 さらにその数秒後には解放し、素直に謝罪の言葉を述べる。


(さすがにこの行動、サイコパスにもほどがあるぞ……っ)


 何も知らない受験生たちが怖がるのは、至極当然の話だ。


 俺は彼らの不安を取り除くべく、簡単に事情を説明することにした。


「みなさん、落ち着いて聞いてください。さっきのは、なんというか……。俺の霊核が少し暴走してしまったようでして……。その、申し訳ないです……」


 そうして取り繕うことなく真摯(しんし)に謝罪をしたが、


「ぼ、暴走って……」


「い、いやいや……。感情の起伏が激し過ぎるだろ……っ」


「柔和で優しい『表の顔』と獰猛(どうもう)で暴力的な『裏の顔』……ありかも……」


 この反応を見るに、あまり効果があったとは思えない。


(当の本人である俺が弁解しても効果は薄い……。ここは第三者の手を借りるしか……っ)


 そうして助けを求めるように副理事長へ視線を向ければ、


「あ、あわわ……っ」


 彼もまたゼオンの殺気に当てられ、腰を抜かしてしまっていた。


(これは……緊急事態だな)


 俺は耳に装着した小型のトランシーバーを使い、急いでレイア先生へ連絡を回す。


「――こちらアレン。すみません、一瞬だけゼオンに体を奪われました……」


 そうして端的に問題を報告すると、


「んな゛っ!?」


 仕事椅子から転げ落ちたのか、ガチャンガチャンと騒々しい音が聞こえてきた。


「ど、どういうことだ!? いったい何があった!?」


「はい、実は――」


 それから俺は、つい先ほど発生したトラブルを簡単に説明した。


 特別試験の実施中、ルー=ロレンティという少女と剣を交えたこと。

 彼女は魂装<共依存の愛人コンパニオン・パートナー>を展開し、その能力は自身と対象の状態をリンクさせるものだと推測されること。


 ルーがその手に小太刀を突き立てた結果、何故かその効果がゼオンに及び、ほんのわずかな切り傷を負ったこと。

 それが原因で奴はぶち切れ、俺の左手の支配権を奪い取り、ルーの首をへし折ろうとしたこと。

 彼女は一応無事だったが、どこかへ走り去ってしまい――そして現在受験生たちは怯え切っており、特別試験の実施が困難であること。


「なるほどな……。しかし、自身と標的をリンクさせる能力か……。これまで聞いたことのない、非常に珍しい能力だな」


 先生は興味深そうにブツブツと呟く。


「――よし、とにかく事情は把握した。それで、ゼオンの状態はどうだ?」


「そう、ですね……。今はとても落ち着いているようです」


 意識を魂の世界へ向ければ、そこにはざわめき一つない静寂(せいじゃく)が広がっていた。

 おそらく、あの表面がバキバキに割れた岩の上で寝ているのだろう。


「ふむ……。おそらく奴は、既にかなりの霊力を溜め込んでいるだろう。間違っても全身の支配権を奪われないよう、これまで以上に強く警戒してくれ」


「……わかりました」


 ゼオンを外の世界に出してはいけない。

 これは俺と先生の共通認識だ。


「ところで……特別試験の方はどうしましょうか?」


「確か受験生たちは全員、アレンを怖がっているんだったな?」


「だいたいそんな感じですね……」


 チラリと彼らの方へ目を向ければ、一斉に目を()らされてしまった。


 なんというか、少しだけ心が痛んだ……。


「ならば仕方あるまい。特別試験はそこで打ち切りして、受験生たちには通常通りの一般試験を受けさせてくれ」


「はい、わかりました」


 その後、俺は特別試験を中断し、受験生たちを一般試験の会場へ誘導する。


 そこから先は大きな問題が起きることもなく、淡々と試験を消化していった。


 こうして途中いろいろなトラブルはあったものの……今年度の千刃学院入学試験は、無事に幕を閉じたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ