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一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~  作者: 月島 秀一


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アレン細胞と政略結婚【五十二】


 ロディスさんがとんでもないことを口にした直後、


「ちょ、ちょっとお父さん!? 何を馬鹿なことを言っているの!?」


 顔を真っ赤にした会長は、慌てて会話に割り込んだ。


「なんだ、いやなのか?」


「べ、別にいやじゃないけど……。って、そうじゃなくて、時と場所を考えてよ!」


 彼女は一瞬だけ俺の方へ目を向けてから、ロディスさんに抗議の声をあげた。


「そうは言うがなぁ……。アレンほど屈強な男は、中々いるものではない。あまりモタモタしておれば、あっという間に取られかねんぞ?」


「そ、そんなのわかってるわよ……っ」


 会長は恥ずかしがったり、怒ったり、小声で何やらブツブツ呟いたりと絶好調だった。


「ふむ、まぁよい……。では二人の決心がついたとき、また挨拶に来るといい」


 ロディスさんはそう短く話をまとめると、左手に巻いた腕時計へ視線を落とした。


「私はこのあたりで、失礼させてもらおうか。この一件について、急いで関係各所と連絡を取らねばならんからな」


 彼はそう言って、幻霊研究所の出口へ向かった。

 政府の重鎮『アークストリア家』の当主として、きっとこれからたくさんの事後処理に追われるのだろう。


 しかし、その後ろ姿は――まるで小躍りしそうなほどに嬉しそうに見えた。


(きっと会長が無事に帰ってきたことが、嬉しくて嬉しくてたまらないんだろうな……)


 俺がそんなことを思っていると、


「あ、アレンくん……っ」


 ほんのりと頬を赤く染め、どこか挙動不審な様子の会長が声を掛けてきた。


「はい、なんでしょうか?」


「さっきのお父さんの話なんだけど、そんなに気にしないでね……? それと勘違いしないで欲しいのが、別にいやってわけじゃなくて……なんというか、その……」


「……その?」


 彼女の言わんとしていることがよくわからず、俺は小首を傾げて続きを促す。


「え、えーっと……。だから、その……っ。ま、また明日学校でね!」


 会長は早口にそう言うと、逃げるようにしてロディスさんの後を追った。


「は、はぁ……。また明日……」


 まるで嵐のように去っていた彼女に、俺は小さく右手を振っておく。


「アレは完全に落ちた(・・・)な……」


「うん、間違いない。あんな顔のシィ、初めて見たんですけど……」


「ふふっ、これは中々に『いじり甲斐』のあるおもちゃができたぞ!」


「シィはああ見えて、経験値ゼロの純情な乙女……。ここは大親友である私たちが、面白おかしく『恋のアドバイス』をしてあげるべきなんですけど……っ!」


 リリム先輩とフェリス先輩は、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて密談を交わしていた。


「よし、それじゃ私たちは一足先に帰って『作戦会議』に入る! また明日、学校で会おうな!」


「これは面白いことになってきたんですけど……!」


 二人はそんなわけのわからないことを言いながら、小走りで研究所を後にした。


(相変わらず、愉快な先輩たちだなぁ……)


 苦笑いを浮かべながら、そんなことを思っていると、


「――すまない、アレンとリアは先に帰っておいてくれ。私は霊力の消耗が激しいから、かかりつけの医者に診てもらうことにするよ」


 ローズはそう言って、大きく息を吐き出した。

 どうやら俺と同じように、彼女も霊力切れを起こしていたようだ。


「一人で大丈夫か? なんだったら、一緒に病院まで付き合うぞ?」


「ありがとう。だが、その心配には及ばない。明日に疲労を残さないため、少し治療を受けるだけだからな」


 ローズはそう言って、小さく笑った。


「しかし、アレンの方こそ大丈夫なのか? 間違いなく一番疲れているはずだし、何より相当な量の霊力を使っていただろう?」


「そうだな、ちょっと試してみるか……」


 俺は闇の衣を全身に纏い、疑似的な黒剣を展開してみた。


(……思ったより、いけそうだな)


 少し休んだことで、霊力もだいぶと回復したようだ。


(確かに出力は、いつもより控え目だけど……)


 これぐらいの闇が出せれば、ある程度の戦闘は問題ないだろう。


「まさかもうそこまで霊力が回復しているとはな……。お前は本当に呆れた奴だよ……」


 苦笑いを浮かべたローズは、軽くこちらへ手を振ってから出口へ向かった。


 そうして俺とリアは、薄暗い研究所に二人残されることとなる。


「さてと……俺たちもそろそろ帰ろうか?」


 そんな提案を口にすると、


「じー……」


 リアはよくわからない効果音を口にしながら、ジッと俺の目を見つめていた。


「えっと……。俺の顔に何かついているのか?」


「別に……ちょっとやきもちを焼いてるだけよ」


 彼女は頬を少し膨らませながら、ぷいとそっぽを向いた。

 どういうわけか、ご機嫌斜めのようだ。

 

「やきもち……?」


「……アレンが悪いわけじゃないし、気にしなくていいわ」


 そうして俺は、何故か少しだけ不機嫌なリアと一緒に二人の寮へ帰ったのだった。


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