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アレン細胞と政略結婚【二十九】


 とりあえず俺は、現状を簡単に説明した。


「――というわけで、俺たちは幻霊研究所のスポットを使い、神聖ローネリア帝国へ侵入を果たしたんだ」


 その話を静かに聞いていたザクは、難しい顔でコクリと頷く。


「うぅむ、なるほどな……。しかし、よりにもよってあの(・・)ヌメロに目を付けられるとは……。そのシィ=アークストリアとやら、よほどついてない女だな……」


 奴は腕組みをしながら、神妙な面持ちでそう呟く。

 その重たい口振りから、ヌメロがどれほどひどい男なのか十二分に伝わってきた。


「――よしわかった。今回の一件、やはり正義はアレンの側にあると見た。ここは一つ力になってやろう!」


「そうか、それは助かるよ」


「ざはは、気にするな! なんと言ったって、これは俺のためでもあるからな!」


「……お前のため?」


「あぁ、そうだ。こんなつまらないところで『希代のキラキラ』が死んでみろ……。無念のあまり、俺は寝込んでしまうだろうな!」


 ザクはそんな縁起でもないことを言って、戸棚の奥から取り出した紙を机の上に広げる


「これはベリオス城の見取り図だ。さっきも言った通り、ここは帝国のど真ん中にそびえ立つベリオス城――しかもその中層に位置する一般構成員の居住区。この部屋の外には、俺の仲間たちだらけだ。はっきり言って、誰の目にも触れずこの城を抜け出すのは不可能だ」


 見取り図の十階部分と一階の入り口を交互に指差しながら、奴は首を横へ振った。


「まぁ、そうだろうな……」


 敵陣のど真ん中から、そう簡単に脱出できるとは思っていない。


「だが、案ずるな。今回は、特別にこいつをくれてやろう!」


 ザクはそう言って、衣装棚の中から黒い外套(がいとう)を六着取り出した。


「あまり大声で言えることではないが……。俺ら黒の組織は、仲間意識というものが薄くてな。同じ居住区に住んでいても、顔と名前が一致する奴はほとんどおらん。隣に誰が住んでいるのか、真向かいさんはどこぞの誰なのか――よほどのモノ好きでもない限り、全くと言っていいほど興味がない」


「へぇ、そうなのか」


「あぁ、そこには任務での高い死亡率という問題があって……いや、今はどうでもいい話だな。まぁつまり何が言いたいかと言うと――たとえ見慣れない集団がいたとしても、その黒い外套さえ着ていれば誰も詮索してこないというわけだ」


 奴はそう言って、自信満々に頷く。


「いや、気持ちはとても嬉しいんだが……。これ、全くサイズが合ってないぞ……?」


 ザクは二メートルもの巨漢であり、奴の体格にあったこの黒い外套はあまりに大き過ぎた。

 いくら仲間の顔を知らないとはいえ……ダボダボの格好で歩いていたら、さすがに怪しまれるだろう。


「ざはは、それは問題にならん。騙されたと思って、一度羽織ってみるがいい!」


「……こうか?」


 そうして『物は試し』とばかりに外套を羽織ったその瞬間、


「こ、これは……!?」


 いったいどういう仕組みなのか……二回り以上も大きかった外套は、俺の体格に合わせてサイズを変えた。


「ざはは、驚いたか? なんと言ってもそれは、『魔具師』ロッド=ガーフの作った特別な外套だからな!」


「……魔具師?」


 何やらまたずいぶんと、きな臭い呼び名がでてきた。


「なんだ、知らんのか? 高度な結界を展開する魔具、魂装の力を抑え込む魔具など、不思議なものばかり作っている変な奴だ。かなり有名だと思ったのだが……まぁ、今はどうでもいいだろう」


 ザクはそうして手短に話を打ち切ると、


「さて……それではそろそろ脱出経路について話そうか」


 ペンを片手に持ちながら、ベリオス城の見取り図に視線を落としたのだった。

明日ばかりは『冗談抜きで本当に短い』と思います……。

(一昨日連絡させていただいた通り、書籍版第1巻の原稿の締め切りが7月28日でして……。体力的に精神的に時間的に割と限界です……っ)。


いわゆる『超修羅場』という奴で、徹夜確定の嬉しい週末になります。

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