問題教員
さて、ここで説明しておくべきなのは先ほど書いた「問題のある教員」であろう。大学には表にならない不祥事、セクハラ・アカハラが実に多い。これはたまたま被害者女性が教員に相談したので文学研究科から正式に処分が下った事例であるが、私が修士課程にいたころ、私と同学年だった女子生徒が社会学講座のT教授から、執拗なセクハラを受け、大学院進学を辞退するという事件が起こった。身の回りで起きたことだからよく覚えているが、頻繁にこの件で他大学の教員からいろいろ尋ねられたし「実はうちの大学でも表沙汰にできないだけで有るんだけどね……」なんて言う話も聞いた。
そもそも大学の研究室は常勤教員一人に一部屋ずつ個室が与えられるため、密室性が高く、このようなことが起こりやすいのである。T教授のような「問題ある教員」に借りを作ってしまうとロクな目に合わない。教員の人格に関する情報を日ごろから集めておくのも大学で世渡りするためには重要だ。
法学研究科でも、こんなことがあった。同室の女性非常勤職員が、憲法学を専門としている教員のところに行ってくるといって、部屋を出て行った。「○○先生のところに、行ってくるー」「あーい」といった感じである。すると、女性非常勤職員はすぐに帰ってきて、「うわあああああああああ!!!」と言って、机に突っ伏し、号泣し始めたのである。「な、何があった…?」と私は思ったが、その号泣があまりにも凄まじいので、声をかけることもできなかった。
こんな○○教授であるが、憲法学の(一応は)権威であり、現在の憲法も自民党改憲草案も支持しない改憲論者として著名なのであった。こんな者でも法学の教授であるから最高裁判事にもなりえる。だが、○○教授は一体非常勤事務員さんに何を言ったのだろうか?今もってわからないが、よっぽど酷いことを言わないと人間ってこんなには号泣しないのではないかと思う。仮に事務員さんに非があったとしても、言い方というものがあるだろう。今思うに、こういうのをパワハラというのではないか。京都大学では、というよりどこの大学でもそうだと思うが、こういったことが実に多い。
そんなある日、会社法を専門とするL教授が研究室にきて、「〇日に山内ホールで研究会やるんだけど、やった後の机の片づけ頼むねー、総動員ねー」と言って去っていく。京都大学には京都大学医学部創立百周年記念紫蘭会館という施設があり、その中に稲盛ホールと山内ホールという研究発表およびレセプション用のホールがある。どうやらそこの机を片付けよ、とのことらしい。だが山内ホールには紫蘭会館のスタッフがいて、作業はその人がやることになっている筈である。さすがに研究員たちも「何で、私らがやるんでしょうねえ?」の疑問はぬぐえなかった。だが「やれ」と言われたからにはやらない訳には行かない。釈然としないが仕方がない。来年の再任のこともある。立場の弱い者の扱いなどこんなものなのだろう。
そして〇日の集合時間に行ってみると、そこに居るのは研究員の一人で台湾からきている留学生のCさんのみである。「あれ、ほかのみんなは……?」と聞いてみると「どうやら皆さん忙しいようですね」。とのこと。確かに。K教授は「総動員ねー」などと言っていたが、当然のことながら、用事がある人もいる。他校での非常勤講師などが考えられる。「仕事中に別の仕事していいのか?」という疑問があるだろうが、15万/月では食っていけないので、研究に関係するあるいはキャリア形成になる仕事は許されるのがこういう立場の通例である。とはいえこうした副業も非常勤で、さしたる収入にならないのだが。