再会
そして、俺はあるテレビ局の出演中、自分の家族について話した。恵美子のこと、雅史のことについて詳しく話した。ただ、いつから二人と別れたのか知らないので、そこは適当に作って話した。もし、この放送を妻や息子が見ていたら会えるかもしれない…
すると、俺の作戦が成功したのか、ある朝、一人の老婆が俺のアパートに訪ねてきた。
「あの…末広雄二さんでいらっしゃいますか」
「そうですが…」
その老婆はそう言うと、涙を流してこう言った。
「恵美子です…」
恵美子…俺の妻の…恵美子…まだこの世にいた…嬉しさのあまり、俺はしばらく言葉が出なかった。
「恵美子なのか…本当に…」
「ええ、そうよ…恵美子よ…雄二さん…無事だったのね」
その老婆は、よく見ると顔の輪郭、目の形、口の形などが俺の知っている恵美子にそっくりであった。年こそ違うものの、ひと目で恵美子だとすぐに分かった。
「恵美子…こんなに…」
(こんなに皺ができちゃって…)と言いそうになり、俺は慌てて口を噤んだ。今の自分も皺だらけなので、そんなことは口が裂けても言えない…
「ごめんなさい、私…あの時…あなたを見捨てて…」
そう言うと、彼女は曲がった腰をさらに曲げて、頭を下げた。やはり恵美子と俺は随分前に別れていたようだ。
「別に良いんだ…」
俺はその時の状況がどんなものだったか知らなかった。だから彼女を攻めたりすることは到底できない…俺と恵美子はその場で肩を寄せ合って泣いた。
そしてその後、俺は恵美子から一緒に暮らそうと言われた。彼女の話によると、今は息子の雅史と娘の晴海と三人で暮らしているそうだ。晴海は俺と別れた後、結婚した人との子供らしい、因みに、彼女の旦那は五年前に他界したそうだ。俺は少々戸惑ったが、一生一人で暮らすのは嫌だし、家族と一緒に暮らしたかったので、彼女の誘いに従った。
物語もそろそろ終盤です。




